【調査】ハーバード大が追跡、デモ活動が「成功」しない理由
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日本でも米国でもそうですが、100万人がどこかに集まって何時間か叫んだからといって、政権が交代しなければならない理由はありません。
選挙をやって負けたのなら別ですが。
20世紀でも、デモ自体が政権を交代させた、という例はほとんどありません。
選挙以外で政権が変わるのは、
① 政権内部で分裂と闘争が起きた結果
② 政権外の武力を持った勢力が、政権を武力で倒した結果
の2通りです。
①と②、いずれの場合も、大規模なデモが起きていることを利用はしますが(たとえば、現政権が国民の支持を失っている証拠として突きつける)、デモ自体が政権を交代させるわけではありません。
天安門事件のように、①も②も無いデモだけだと政権は変わりません。
フィリピンで繰り返された「ピープル・パワー」も、「アラブの春」のエジプトもそうですが、①政権内部の分裂と闘争、特に軍が政権交代を迫れば、政権交代は起きます。
②政権外の武装勢力による政権の打倒、は、現代では起きにくくなっています。起きるとしても、1919年のロシア革命や1979年のイラン革命のように、政府軍が寝返ることが必要です。
ただし、イラクやアフガニスタンのように、米軍などの強大な外国軍が攻め込んでくるなら別です。
現在のイランには、①も②も条件が非常に不足しています。
政権内部自体には、大きな分裂はありません。
政権を倒せるような、政権外の武装勢力はありません。クルド人やバローチ人といった少数民族が、わずかに反乱を試みているのみです。
政権を別のものにすることができるのは、武力だけです。
米軍の地上軍が攻め込むのなら別ですが、イラン人自身が、命がけで政権を倒そうとする動きはありません。100万人が路上で叫んでも、何も変わりません。
政権の実権を握る革命防衛隊を倒せる勢力があるとしたら、正規軍の陸軍くらいですが、彼らが大規模な反乱を起こす理由はありません。
100年前のレーニンや毛沢東のように、地下に潜って武装勢力をつくり、泥水をすすりながら数十年間戦い続ければ機会があるかもしれませんが、デモで叫んでいるイランの大学生にそこまでの覚悟は無いし、グローバル化した今の時代、カナダにでも逃げた方が楽です。情報通信技術の発展によって、政権の監視能力も桁違いに向上し、地下に潜って戦い続ける、ということもできなくなりました。このNYTのレポートで面白かったのは、デモの成功率がなぜ下がるのかということに加え、「女性が参加するデモは成功する率が高い」ということでした。イランの友人がたくさんいますが、今彼女たちは怒っています。このハーバード大のデータが示すように、この怒りが、そして叫びがきちんと届くように強く願います。
10月8日は、全米で女性のマーチが開かれました。ここ数年開かれているものですが、今年は中間選挙を1ヶ月に控えた今日、各都市で女性が権利の獲得を訴えました。ワシントンD.C.で取材していたのですが、イラン系アメリカ人の女性が二人スピーチしていましたし、そして何より今回は中絶権を巡って全米の女性たちがもうたくさんだと声を上げていました。
非常に熱いものを私も感じました。レポートのデータの数値が示すところは「そうなのか」と大変興味深く読みましたが、私自身はデモの力を信じたい。声を上げるということがなくなってしまったら、本当に世界は変わらないのだから。最初は単純に母数が増えたからかと思いましたが、もう少し深いところがあることが分かりました。「国の陰の実力者を説得する」「自分たちに同調してくれる、政府内部の支持者を獲得する必要」という面では、結局デモの目的がどれだけ浸透しているかー最近の流行言葉で言えばパーパスの浸透―と手段であるデモを目的と勘違いしない・させないリーダーの重要性があると感じます。