2015年の予測〜イノベーション編〜
ソフトウェアが全てを飲み込み、レベニューイノベーションが始まる
2015/1/2
テクノロジーの発展と普及によって、今後どんな変革が起こるのか? SAPジャパンのChief Innovation Officer、馬場渉が2015年のイノベーションを予測する。
1. ソフトウェア型企業が全ての産業で頭角を現す
自動車、家電、消費財、産業機器、小売、メディア、サービスなど全ての業界において「ソフトウェア主導型企業」が出現する。
自動車会社の中には、全ての新車を「コネクテッド・カー」(インターネット回線に接続して様々なサービスが提供される車)とする会社が現れる。無名な「コネクテッド・シューズ」が店頭に並び、食品や化粧品もネットワーク化される。
その多くは日本国外から入ってくるであろうが、一部の日本企業は自ら強いソフトウェア部門を抱えるか、もしくはソフトウェア企業とのパートナーシップにより、「software eats everything」を主導または追う企業が出現する。
その一方でleadもfollowもしない圧倒的多数の「メタボ型日本企業」は存在し続ける。
2. 地方大再編
スポーツ、エネルギー、交通、行政、スタートアップの領域では、地方で大きな動きが起こる。
地方における金融もマネーサプライの急増に伴う本業収益力の低下と、預貸率改善圧力から、地銀、信金とも大きな再編が起こる。
社会構造を変えるパワーとはならないものの、それぞれの地方が変わる十分なパワーとして認識されるようになる。
同時に、そうした全国での成功事例によって、都市と地方との格差問題に代わり、地方同士の実力差問題が大きな議論となっていく。
3. 国家プロジェクトの脱実験場の加速
従来、税金を費やして実験や検証を行っていた企業や大学、国の機関などの「研究開発志向型」の国プロ(国家プロジェクト)が淘汰され、ビジネスマインドを持った「事業継続型」のプロジェクトが主流となる。
日本における国プロというと、企業や大学の実験場となっており、研究開発の人間が多くを占めたコミュニティであった。国のカネで好きなことをやれると、事業継続など意識していないケースすら多く見られ、そのため国からの金の切れ目が縁の切れ目となる原因なっていた。
ここ数年、国はそれを大きく変えようとしていたが、事業マインドをもった人間を国プロに惹きつけるほど魅力もなく、また制度的障壁があるうえに事務も煩雑であり、プロジェクトに参画する人材層にイノベーションは起こってこなかった。
その状況もそろそろブレークスルーを迎える時期となろう。
4. 人事責任者は最重要ポストとなる
人事は最重要事項として認識され、自社のHR(Human Resources)責任者に外国人や社外プロ人材を配置するなど、根本的な変化を選択する企業が増えていくことが予測される。
多くの日本企業にとって人事部門ほど、今もっとも多様かつ緊急性の高い変革プレッシャーに直面している部門はない。そのわりにそれほど広い話題にならず、当事者の自覚のない職種もない。
グローバル、非正規雇用、採用、ミレニアル世代、評価と報酬、リーダーシップ開発など、昨今多く変化した難題に対し、手付かずのままの企業が非常に多い。
5. レベニューイノベーション
昔から電気・ガス・水道・電話といったインフラに関しては「利用料課金」が浸透しているが、産業界においても「機器を販売して稼ぐビジネスモデル」から「サービスによる売上」へより売上構造がシフトすることが予想される。
クラウド化といったメガトレンドも同様であり、機器の「所有」から「利用」へよりシフトするものと思われる。そこでの売上構造はまさに「利用料・使用料に応じた課金売上」である。
2014年5月にはエプソンが「スマートチャージ」のビジネスを開始した。プリンターの初期導入コスト0円、月額1万円でプリンター、インク、サービスが提供され、まさに従来のビジネスモデルとは全く違うアプローチを開始した。
医療機器業界、コンプレッサー業界などでも同様の利用料課金へのシフトが始まっており、2015年はさらに多くの業界で同様の動きが出てくる見込みだ。
技術的な進歩も、この流れを後押ししている。機器に組み込んだ各種センサー情報をもとに稼働状況を把握できるようになったことで、新たなビジネスモデルに踏み出すことが可能になってきている。
従来、初期コストが足枷で市場に浸透しづらかった機器や製品などでは、特にレベニューイノベーションを進めるだろう。