(ブルームバーグ): いよいよ10月11日から、日本政府がワクチン接種済みの外国人観光客の入国規制を大きく緩和する。円安に苦しむ国内事情と違って、米ドルを手に入国する多くの旅行者にとって、この国はとてつもなくお値打ちな国に映っているに違いない。

入国措置の緩和で、日本政府は円安メリットを最大限利用し、インバウンド観光を梃(てこ)に経済の活性化を図る。岸田文雄首相は3日、衆院本会議での所信表明演説で「訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指す」と述べた。

円安は過去1年でドルに対して約2割進んだ。円を基準に考えれば物価高を招く負の要因にしか見えないが、ドルを基準にすると見方は変わる。米国ではすでにインフレが高進し、モノやサービスの価格が驚くほど上がってしまった。米国から来る観光客の目線で見ると、円安という要素が加わったことで日本のお買い得感は一層増したと言える。

日本にあるモノやサービスの価格をすべて1ドル=144.80円でドル換算し、米国での価格と比較すると価値に対する新たな気付きが生まれる。以下に挙げる日米比較は、観光大国に進む日本の現状をうまく映し出すかもしれない。

食事やお酒

 

都内にはミシュランの星付きレストランも多い。だが、日本では安くて質の高い食事をどこでも楽しむことができる。ラーメンなら1杯5.2ドル、いろいろトッピングしても10ドル程度だ。ニューヨークのトット・ラーメンなら16ドルはかかる。

都内のすし屋でのおまかせコースなら35ドル程度からある。酒を飲みながらちょっと良い食事をしてもほぼそのぐらいの水準に収まる。ニューヨークで安くて人気のすし店「Katsuei」なら、おまかせコースがチップやサービス料を別にしても約65ドルだ。

都内の居酒屋で2-3時間、それなりに料理をつまみながらビールやハイボールを飲んでも40ー50ドルを超えることはめったにない。ニューヨークなら同じか少々質が悪くても3倍の値段は覚悟する必要がある。

宿泊

東京の三つ星ホテルのダブルルームに宿泊するなら1泊55ドル以下で予約できるが、マンハッタンだと最低でも180ドルはかかる。バスルームが共同でもよいなら都内のカプセルホテルに21ドルで泊まるという選択肢もある。これならニューヨークで一番安いホテルの半分以下だ。

和のぜいたくを楽しみたいのなら老舗旅館に泊まってみるとよい。夕食と朝食が付いて1人1泊175ドル程度だ。ニューヨークで豪華なホテルに泊まれば、この倍以上かかる。

交通機関

新幹線「のぞみ」を使えば東京から大阪まで約2時間半で料金は約102ドル。航空券やホテル、レジャーの検索・比較アプリを手掛ける「KAYAK」によれば、同じ距離となるボストン-フィラデルフィア間を飛行機で移動した場合、約170ドルかかる。

東京の地下鉄は、距離が長くなるほど料金が高くなる仕組み。東京の主要駅を移動しても、ほとんど1.40ドル以下だ。どこまで乗ってもニューヨークの地下鉄は2.75ドルの均一運賃なので、ずっと安く済む。

タクシー料金に関しては例外と言える。東京駅から六本木まで昼間にタクシーを利用すると約15分、料金は約14ドル。同距離のニューヨークウエストビレッジからタイムズスクエアまでタクシーに乗った場合と料金はほぼ同じ。日本ではライドシェアの規制が厳しく参入障壁が高い。このため都内のタクシーは今も高い料金を維持することができている。

テーマパーク

東京ディズニーリゾートの1日パスポートは大人が54.60ドル。一方、フロリダのディズニー・ワールドの1日券は109ドル。大人2人と10歳以下の子供2人の家族で利用する場合、フロリダの426ドルに対し東京は176ドルからとなる。

東京スカイツリーには展望台が二つあるが、両方楽しめるチケットを買うと大人1人で21ドル。ニューヨークにあるエンパイアステートビルの料金77ドルに比べれば破格だ。

このほか、東京や京都にある博物館、寺院、観光スポットのほとんどは料金無料か、せいぜい15ドルといったとこだろう。

 

衣類

日本のユニクロでメンズのシャツが約21ドル、米国のユニクロだと39.90ドルする。都内にあるビックカメラで中型のスーツケースを買えば約113ドル、マンハッタンのエンパイアラゲッジなら同程度のものが250ドルはかかる。

日本のコンビニエンスストアでスナックや雑貨を買えば、米国の大都市と比べるとだいたい2割-3割は安く、旅行者にとってはお買い得があるだろう。

日本では眼鏡をとても安く作ることができる。JinsやZoffといったディスカウントチェーンが何百もあって、40分もあれば38ドルで作れてしまう。ウォルマートや同じような眼鏡店ならこの倍以上かかるだろう。

原題:

Great Deals Available in Japan for Tourists Armed With Dollars(抜粋)

©2022 Bloomberg L.P.