塩野義、低所得国にコロナ飲み薬 承認前提に契約
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現実問題として、ワクチン接種も十分に広がっていない国も多い中で、軽症から中等症患者の症状回復までの時間を24時間短縮する薬剤の重要性がどこまで高いかという点は考えさせられます。まして、発症から72時間未満に投与を開始するという制約もある中での話となります。
一方、公衆衛生上の最優先課題は、命を守る、重症化を防ぐ薬、ワクチンをより広く届けることであるという点は疑いのないところだと思います。
この点を実現する役割のある薬剤ではないということは、ニュースと合わせて知っておくべき点かもしれません。残念ながら、既存のエビデンスからは、世界を変えるような動きにはならないと考えられます。医薬品の場合、開発から商業ラインに乗せるまでと、乗せた後の追跡調査に多額のコストがかかります。日本などの少数の国は除いて、基本的には医薬品の価格は企業が設定することができるため、このコスト回収と新薬開発のための費用として、医薬品の価格を付けますが、競争力がある画期的な新薬の場合は高い価格を設定しようとします。逆にジェネリック医薬品が存在するケースや同種同効薬といわれる「似た薬」がある場合は、市場での競争力を確保するために安価に設定します。
一般にバイオ医薬品を除いて、研究開発費や研究開発費にかかる費用に比べ、変動費にあたる「製造原価」は低いのが実態です。低所得国の国民は高額な医薬品を購入することが難しいことから、社会貢献として販売価格を変えて供給することがあります。
新型コロナウイルス感染症関連薬では、ワクチンに関しては国連サポートによるCOVAXというプログラムで供給され、抗ウイルス薬でも米メルク社が特定の国の対象者に対して供給を行っています。
ただし「供給機関」は、新薬を1から評価して承認する技能はないため、医薬品の評価能力がある国の薬事承認を前提にします。塩野義製薬の抗ウイルス薬は日本で承認を申請する予定ですが、内容は(他国などにも聞き)しっかり確認されます。
少なくとも承認前の医薬品について、社会貢献枠(ごく低価格)での供給を行うことを約束したというケースは聞いたことがありません。ただし承認は、このような社会貢献枠での供給予定とは切り離して、あくまで科学的判断に基づく審査が進められます。