[東京 3日 ロイター] - 日銀が3日発表した9月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス8と、3期連続で悪化した。幅広い業種で原材料コスト高が負担となっている。一方、非製造業DIはプラス14と、2期連続で改善。感染症対策の行動制限が緩和されたことが対面型サービスの業況を上向かせた。

大企業・製造業の業況判断DIはロイターがまとめた予測中央値(プラス11)を下回り、2021年3月以来の低水準となった。「石油・石炭製品」から市況下落に伴う在庫評価損、「非鉄金属」から電力コスト上昇による採算悪化などが聞かれた。

一方、「自動車」はマイナス15と、前回から4ポイント改善した。中国・上海のロックダウン(都市封鎖)解消に伴う部材供給難の解消や、円安による収益増などの指摘が聞かれたという。

先行き判断DIはプラス9と、小幅な改善を見込む。改善を予想した業種からは価格転嫁の進展を理由に上げられていた。

大企業・非製造業の業況判断DIは19年12月以来の高水準。ロイターがまとめた予測中央値(プラス13)を上回った。行動制限の緩和を背景に「不動産」、「運輸・郵便」、「宿泊・飲食サービス」などが改善した。

先行き判断DIはプラス11と、3ポイントの悪化を見込む。仕入れコストの上昇や経済の先行き不透明感などが懸念材料となっている。

<想定為替レートは円安方向に修正>

事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)は、2022年度通期で1ドル=125.71円と、前回6月調査から6.7円程度円安方向に修正された。円安進行に対しては、企業から業績面で為替差益の話が出ており、日銀幹部は「プラスの声の方が多かった」と述べた。

大規模・製造業の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)はプラス36と、前回から2ポイント上昇した。仕入価格判断DI(同)前回から横ばいのプラス65。水準は1980年5月以来の高水準で、コスト増に対する負担感が根強い。

設備投資額(全規模・全産業)が、過去平均の修正率を上回る上方修正となり、前年度比16.4%増となった。9月時点での伸び率は1983年以来で過去最高。企業のしっかりした設備投資意欲が引き続き示された。

企業の予想インフレ率は上向き、短期のみならず中長期にも波及している。企業の物価見通しは1年後が前年比プラス2.6%、3年後が同プラス2.1%、5年後は同プラス2.0%で、いずれも過去最高となった。5年後の見通しが2%に達したのは初めて。

専門家からは「コストプッシュ型の物価上昇が手前の年を中心に想定されているものとみられ、異次元緩和修正には直結してこない」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との指摘が出ていた。

今回の短観の調査期間は8月29日から9月30日。回答基準日は9月12日で、回答基準日までで7割台半ばが回答した。

(杉山健太郎)