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「一番おいしい「最初にやるべきサイエンス」にはアクセスできず、公開データを使った「取りこぼしのサイエンス」しかできなくなります」
と記事にあるのは、自動車でいえばトヨタやテスラにはなれない、研究開発はできず、タイとかにある部品生産の下請け会社にしかなれない、ということになります。
下請け会社が無ければ自動車は完成しません。科学も、むしろ大多数の下請け、「取りこぼしのサイエンス」をやる研究者によって支えられています。
しかし、才能があり、「世界最新の自動車開発に携わりたい」という若い研究者は、留学して、米国などの会社に入社することを目指すでしょう。
日本も、科学研究において、下請けの国になるかどうか、です。タイでもマレーシアでも、世界の大多数の国は、下請けの国です。
もともと、日本は下請けの方が向いているところはあります。
科学が大きく前進するのは、トップダウンで莫大な資金が投じられた結果、という場合が多いです。
ルーズベルト大統領が原爆開発を命じたり、ケネディ大統領が我々は月へ行く、といったりした結果、莫大な予算が投じられ、猛烈な勢いで多分野の研究が進展しました。いくつもの新しい分野が生まれました。
多くの失敗もありましたが、失敗を許すだけの金額の予算がありました。
今、トップダウンの政治と巨額の科学予算がある国は、米国と中国だけです。
中途半端な国だと、かつてソ連がスターリンの時にルイセンコという人物の生物学に投資して、壊滅的なことになりました。
日本はトップダウンの政治も巨額の科学予算もないので、謙虚に米国の研究に学び、優秀な若い人が米国へ留学できるようになけなしの予算を投じ、国内では米国の下請けに徹して、安くて質の良い成果を出して、次の機会が来るのを待つのが妥当でしょう。
中国の下請けをするかどうか、は、政治的な判断の問題になりますが、やめておいた方がいいだろうとは思います。日本政府が決めることというより、米国からストップがかかればやめる、それが無ければ金の力で進んでいく、ということになるでしょうが。
しかしそんな中国でも、経済成長の鈍化は大きな壁になりそうです。
中国の研究開発費は、現在も毎年2桁の伸びですが、経済産業省の分析によれば、中国の研究開発の投資効率はここ十年で継続的に低下してきています。
また技術進歩による経済成長をあらわす全要素生産性(TFP)という指標を計算してみても、近年はその値が低下してきているのです。
つまり中国も、いつもまでも巨額の研究開発費を注ぎ込むのではなく、これからは投資効率を重視する時期になるということです。日本も「投資効率」という観点で対抗していけば、それなりに勝負ができるのではないかと思います。