[キーウ(キエフ) 23日 ロイター] - 親ロシア派勢力が実効支配するウクライナ南東部の4地域で23日、ロシアへの編入の賛否を問う住民投票が始まった。投票が実施されている地域はウクライナの領土の約15%に相当。ロシアは4地域を編入した後、この地域を奪還するための攻撃をロシア連邦への攻撃と見なし、核による対応さえも正当化する恐れがある。

23日から4日間の日程で住民投票が始まったのは東部のドネツクとルガンスク、および南部のへルソンとザポロジエの一部地域。ロシアのインタファクス通信は地元選挙管理当局の話として、初日に投票した住民の割合はザポロジエで20.5%以上、ヘルソン15%だったと報じた。ロシアが設置したヘルソンの選挙管理委員会のマリーナ・ザハロワ委員長は「投票初日としては十分だ」と述べた。

ロシア国内に移住したこの地域の住民のための投票所が首都モスクワに設置されているほか、モスクワと第二の都市サンクトペテルブルクでは、政府支持者が住民投票と戦いの遂行を支持する集会を開いている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は恒例の夜の演説で、ロシアが今週始めた動員とともに、住民投票は世界から「明確に非難」されるとし、「国際法やウクライナの法律の下での犯罪であるだけでなく、特定の人々と国家に対する犯罪だ」と述べた。

<投票を強制との報告も>

ウクライナ当局によると、投票が実施される4日間は住民は域外に出ることを禁じられている。

ウクライナ東部ルガンスク州のガイダイ知事によると、スタロビルスクで住民の外出が禁止され、投票のために強制的に家から連れ出される人もいた。ビロボドスクでは、企業の役員が従業員に投票を義務付け、投票を拒否すれば、解雇した上で氏名を治安当局に告げると言い渡しているという。

ガイダイ氏は、町が封鎖される中で住民は台所や庭などのプライバシーがない場所で「紙切れ」に記入することを強制されていると述べた。

ロイターは投票が強制されているとの報告について、独自に確認できていない。

<西側は非難>

西側諸国とウクライナのほか国連などは、今回の住民投票は違法な併合への準備と非難。

主要7カ国(G7)首脳はこの日に発表した共同声明で、ロシアは「見せかけ」の住民投票でウクライナの主権的領土を変更するための「偽りの」口実を作ろうと試みていると非難。「ロシアによる併合に向けた一歩と考えられるこれらの住民投票を決して認めない。併合が行われたとしても承認しない」とした。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も、住民投票は「見せかけ」だとした上で、ウクライナへの支援を強化すると述べた。

米国や欧州各国が加盟する欧州安保協力機構(OSCE)も、今回の住民投票の結果は何の法的効力も持たないとの見解を示している。