[モスクワ/ロンドン 20日 ロイター] - ウクライナ東・南部の親ロシア派支配地域やロシア軍の占領地域は20日、ロシアへの編入の是非を問う住民投票を23─27日に実施すると表明した。ロシアはこうした動きを後押ししており、実際に編入されれば西側諸国に対する直接的な挑戦となり、紛争が急激にエスカレートする恐れがある。

ウクライナと支援国は相次いで非難した。

ウクライナのゼレンスキー大統領の側近、アンドリー・イェルマク氏は、住民投票の実施はロシアが恐怖を感じているからに他ならないとし、「ウクライナはロシアによる問題を解決する。脅威は力によってのみ排除できる」と述べた。

ウクライナのクレバ外相は米国のトーマスグリーンフィールド国連大使との会談の冒頭、記者団に対し「ロシアは好きにすればいい。事態は何ら変わらないだろう」と述べた。さらにツイッターへの投稿で「ロシアはこれまでも、そしてこれからも、ウクライナの国土の一部を不法に占拠する侵略者だ。ウクライナには自国の領土を解放するあらゆる権利があり、ロシアが何を言おうと解放し続ける」とした。

リトアニアのナウセーダ大統領も「これらの地域は現在もこれからもウクライナの領土だ。ロシアの見せかけの住民投票は違法で、リトアニアは決して認めない」と表明した。報道官が明らかにした。

占領地での戦闘をロシアへの攻撃と見なすことで、ロシアは200万人強の予備兵を動員する正当な理由を得られるが、これまでのところ、そうした動きを否定している。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ロシアのプーチン大統領が予備兵の動員を検討している可能性があるという報道について認識していると述べた。その上で、ロシアの侵略に反撃するウクライナの能力を損なうことはないとの見解を示した。

ウクライナは全ロシア兵を国土から退去させるまで手を緩めないと表明。ロシア軍との闘いに向けより多くの高性能武器の提供を西側諸国に求めている。

侵攻開始から7カ月が経過し、ウクライナ北東部で後退を迫られる中、プーチン大統領は次の手を模索しているとみられる。ロシアが実効支配するウクライナの親ロシア派は事前に計画されていたかのようにこの日、住民投票の実施を表明。

ウクライナ東部の親ロシア派勢力「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」に加え、南部ヘルソン州にロシアが設置した行政機関、および南部ザポロジエ州のロシア軍占領地域が、24時間の間に相次いでロシアへの編入の是非を問う住民投票を23─27日に実施すると表明した。

ヘルソン州は約95%がロシア軍の占領下にある。行政機関の当局者はSNS(交流サイト)に、ヘルソンが「ロシアの一部、統一された国の正式な一部」になることを望むと投稿した。

ロシアのラブロフ外相は住民投票について「(ウクライナに対する特別軍事)作戦を開始したときから、それぞれの土地の住民が自らの運命を決定するべきとの見解を示してきた。現在の状況全体は、住民に自らの運命を自分たちで決定する意思があることを示している」と述べた。

2008年から12年までロシア大統領を務め、現在はロシア安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ氏は、ロシアの歴史の流れを変え、ロシア政府の領土防衛に向けた選択肢が増えることになるとし、支持を表明。「ロシア領土への侵入は犯罪であり、ロシアはこうした犯罪に対し自衛のためにあらゆる力を行使できる。このためにウクライナと西側諸国は住民投票を恐れている」と述べた。

ボロディン下院議長も住民投票の実施に支持を表明した。

ロシアが実際にウクライナの広範な領土を正式に編入すれば、プーチン大統領は実質的に欧米との直接的な軍事衝突の危険をあえて冒すことになる。政治分析を行うR・ポリティクの創設者、タチアナ・スタノバヤ氏は「住民投票の即時実施は、ウクライナと西側諸国に対するロシアの明白な最後通告」との見方を示した。

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