[トビリシ 14日 ロイター] - 旧ソ連構成国のアゼルバイジャンとアルメニアの間で14日、新たな軍事衝突が発生した。係争地ナゴルノカラバフを巡り対立する両国に対し国際社会は和平を呼びかけているが、2020年以降で最悪となった今回の衝突でアルメニア側の死者はすでに100人超に上った。

アルメニア国防省はアゼルバイジャン軍が大砲や迫撃砲、小銃を発射したと非難し「国境の状況は緊迫が続いている」と指摘。パシニャン首相は議会で、今回の衝突開始以降アルメニア兵105人が死亡したと明らかにした。アルメニアはロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」に支援を要請したという。

アルメニアのホヴァニシャン外務次官はこの日、ロイターに対し、軍事衝突が戦争に発展する恐れがあるとし、ロシア軍がウクライナに侵攻する中、旧ソ連構成国の間で2回目の大規模な武力衝突が起きる恐れがあると懸念を示した。

アゼルバイジャンは、ロシアと軍事同盟を結ぶアルメニアが迫撃砲や大砲で攻撃したとし、衝突が発生してから民間人2人が負傷したと主張。アゼルバイジャン国防省は「われわれの陣地は現在、定期的に砲撃を受けている。部隊は必要な対応策を講じている」とした。

アルメニア国防省は、アゼルバイジャンに対する砲撃を否定している。

13日は係争地ナゴルノカラバフを巡り両軍が衝突し、少なくともアルメニア軍で49人、アゼルバイジャン軍で50人の死者が出た。

両国の全面的な紛争はロシアとトルコを巻き込む恐れがある。また石油と天然ガスを輸送するパイプラインが通る重要な地域が不安定になりかねない。

トルコのエルドアン大統領はこの日、アルメニアのアゼルバイジャンに対する態度は容認できないとの考えを表明。トルコ政府高官によると、エルドアン大統領はロシアのプーチン大統領と16日にウズベキスタンで行う会談で、アルメニアとアゼルバイジャンの情勢を巡り協議する。

13日の武力衝突を受け、ロシアのプーチン大統領らが事態の鎮静化を呼びかけたほか、ブリンケン米国務長官はアルメニアのパシニャン首相、およびアゼルバイジャンのアリエフ大統領と個別に電話会談を行い、米国の懸念を伝えると同時に即時停戦を呼びかけた。

このほか、欧州連合(EU)のトイボ・クラール特別代表は対話を促進するため、14日に南コーカサスを訪問。CSTOも状況把握のため代表団を派遣した。

旧ソ連構成国では、中央アジアのキルギスとタジキスタンでも国境で紛争が発生し、死者が出ている。