[ドーハ 13日 ロイター] - サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会の開幕まで残すところ2カ月余りとなる中、会場となる最大のスタジアムで試験運用のために大規模イベントが行われたが、大きな混乱が生じた。

決勝戦が行われるルサイル競技場で9日に「ルサイル・スーパーカップ」と銘打たれたイベントが行われ、7万8000人近くの観客が試合や歌手のパフォーマンスを楽しんだが、運営側はその大人数の対処に苦慮することになった。

イベント後には大観衆がスタジアムを後にして帰路につこうとしたところ、真夜中の大混雑で群衆の動きが制御できない状況になった。地下鉄までの道のりが渋滞し、誘導員は「止まれ、満員なのが分からないのか」と叫び、ファンが誘導員に肘打ち行為に及んだり、規制線を突破して地下鉄に強引に乗ろうとしたりと混乱状態に陥った。

スタジアムから駅の入り口までは400メートルの距離だが、観客はその入口に入るために2.5キロもの列を作って待つ必要があった。関係者によると、これは暴動を避けるための措置だったという。

また、混乱状況で「通してくれ、子どもがいるんだ」と汗だくの幼児を抱えた男性が泣き叫んだり、長蛇の列で待つ女性が「水が欲しい。水はないのか」と大声を出す様子も見られた。

飲料水不足の問題はスタジアムでも発生。ハーフタイムまでには売り切れとなり、スタジアム外でも入手できない状況だった。この時期の気温は34度だが、湿度が高いために体感はより厳しい。

ルサイル競技場で大規模な催しが開かれたのは今回が初めてで、カタールがW杯のようなイベントをこれまで開催したことはない。大会の最初の12日間はドーハ周辺で連日4試合が行われる予定となっており、国際サッカー連盟(FIFA)によると、300万枚のチケットのうち245万枚がすでに販売済み。カタールの人口の約半数に相当する120万人が観戦に訪れると見込まれている。

大会組織委員会の広報担当はロイターに対し、今回のイベントは「シームレスな」W杯の実現に向けて運営上の問題点を洗い出し、教訓を得るために企画されたものと説明している。

2004年からドーハに住むエジプト人ファンは「あまりにひどい。こんなことになるのなら、もうW杯には行きたくない」と憤っていた。