建設DXのアンドパッドが122億円調達、海外機関投資家から選ばれる理由とは
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アナログなオペレーションによる時間/金銭ロスが著しい建設の末端現場をターゲットにしたDX事業は今後伸びますよ。スタンフォードの同級生が半年前に北米市場をターゲットに同じビジネスモデルで起業し、私もアドバイザーを務めているのでアンドパッドのことはめちゃくちゃ研究させて貰っております笑。
そしてSaaSスタートアップには珍しいDCFバリュエーションを活用した資金調達。ベンチャー投資でDCFを使わないのは、(利益ではなく)キャッシュフローが赤字→黒字に転じるタイミングの設定に極めて恣意性が強く働くからです。過去5年ずっとキャッシュバーンしてきた会社が2年後から現金産み始めます、主張したところで「ホントかよ?」とフツーなるので。よってスタートアップの「現在」時点で唯一のプラス指標である売上にマルチプルを掛けるバリュエーションがベンチャー投資のデファクトになり、そこを逆手に取った中華系/一部シリコンバレーのスタートアップがジャブジャブな資本市場から調達したカネをめちゃくちゃに燃やして作った売上をベースにしたバリュエーションで上場ゴールをキメる、というトレンドが過去数年産まれました。
今回DCFベースのバリュエーションが通った、ということは、アンドパッドが①既にキャッシュフロー黒字化を達成もしくは極めて黒字に近い改善トレンドを実績として示している、もしくは②丹精込めて作った事業計画においてCAC→LTVの転換の動線(要するに燃やしたカネが一過性ではなく長期の顧客囲い込みに貢献しているという説明)の説得力が高かった、のどちらかだったと思慮。資本市場の環境が変わったとて、特に環境変化前の春先に組成したファンドが引き続き投資先を求めることに変わりはないので、クチで大層なビジョンを語るだけでなくちゃんと事業計画練り込んでくるカタい案件に投資が集まるのは自然なことでしょう。
余談ですがDCF法がマルチプル法よりマーケットの調整による影響を受けにくい、という本稿の説明には大いに疑義があり、寧ろ割引率の金利を通じて分かりやすくモロにマーケット調整の影響を受けます。マルチプル法は類似企業の売上と時価総額の乖離という結果論に基づくもので、間接的にはマーケットの影響を受けるが。
注目のコメント
アンドパッドCFOとして、改めてコメントさせて頂きます。
20年弱のCFOキャリアの中で、2008年のリーマンショックの時も、2015年のチャイナショックの時も、2020年のコロナ禍に突入した直後も、常に資金調達をして来ましたが、今回の資金調達はそれらの資金調達を上回る難易度だったので、この数ヶ月間は常に内心で焦燥感を感じていました。
今回122億円という調達が出来た理由は、グローバル機関投資家が中長期に投資可能と判断するための以下の4点を満たしていた事が大きかったと思います。
①潜在&顕在市場規模の大きさとその拡張余地
②独占的なポジショニング
③明確な成長戦略と、それを支えるエグゼキューション力
④10年単位のビジョンにコミットする経営チーム
そして、資金調達完了とともに、今後の戦略的な投資領域に関する基本方針を定めた「ANDPAD Second Act」を公表しました。
コーポレートサイトに掲載したリリースの本文中にリンクを貼っていますので、是非ご覧頂ければと思います。
未上場のスタートアップが戦略をまとめた資料を公表する事はまだまだ珍しいと思いますが、今回「Second Act」としてアンドパッドの今後を担う重要な6つの戦略を公表した理由は、これらの戦略を実行し、非連続な成長を実現するための力強いリーダーを求めているためです。
アンドパッドは、これからもまだまだ遠く長い道のりを歩んでいく事になるかと思いますが、「幸せを築く人を、幸せに」というミッション達成のために、高い志を持ち、建設業界に寄り添う会社を創っていきたいと思います。国内でもバーティカルSaaSの認知・注目が集まる中で、厳しい市況感のあっても、このような大型調達が行われたことは非常にポジティブです。
日本の生産性の低さに非IT化、アナログ要素が根強くある中で、アンドパッドのみならず各業界のDX化をスタートアップが推し進めている例が増えています。
先日ミーティングをしたとあるバーティカルSaaSスタートアップ経営者の方は「業界向けSaaSは地味と思われがち」とコメントされていましたが、私はそのような人知れずDX化を進めていく推進者こそ注目、評価されるべきだと感じています。
またこのような業界の本質に迫るスタートアップにおいては、10年前と比べるとかなり給与、待遇水準も上がっており、ぜひ、大企業に居る方、業界に対し強い想いを持っている方の人材移動が進むといいなと思います。この市況でこれほどの大型資金調達はすごいですね。しかも122億円のうち、デットが15億円というのは意外と少ないなと思いました。
今回の調達と今後の戦略などについてがまとまっている「ANDPAD Second Act」
https://speakerdeck.com/andpad_hr88/andpad-second-act
荻野CFOは大学卒業後から30歳まではデイトレーダーで2005年に当時投資していたマクロミルに入社し、1年で執行役員CFOに就任。ミクシィCFO時代には約10ヶ月間で時価総額を200億円から5,000億円にまで成長させた実績があるなど、ファイナンスを起点にアンドパッドを、建設業界を変革させていくと思うので非常に楽しみです。
3兆円企業をつくるのが、僕の仕事──アンドパッドCFOに荻野泰弘が就任。窮地のミクシィを救った男の「次なる野望」
https://compass.vision/andpad-ogino/
2020年のシリーズCで入ったSequoia Capital Chinaが追加出資しなかったのは気になります。とはいえ、1931年にロサンゼルスで設立された某ロング・オンリー機関投資家が入ってますね