コロナ飲み薬、16日から一般流通 米メルク製、軽・中等症対象
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複数の懸念を抱かせるニュースです。
一般流通が始まるのはモルヌピラビルという新型コロナの飲み薬ですが、この薬は重症化リスクのある人が発症早期に内服することで、「重症化を防ぐ」効果の期待できる薬です。逆に言えば、それ以外の効果は知られていません。
また、その効果は限定的であり、パクスロビドなどの他の薬剤に劣ると考えられています。このことから、米国では、すべての治療薬の中で最終の選択肢とされています。
しかし、日本国内では広く第一選択のように使用されており、本来使用が広がるべきパクスロビドの使用が手続き上の問題や医師の不慣れの問題などで十分広がっていません。
この一般流通の開始が、モルヌピラビルの使用に拍車をかけ、本来使われるべき治療薬が使われないことや、この薬の効果が期待できない患者への不適切使用につながらないかが懸念されます。
繰り返しになりますが、この薬は重症化リスクのある人が発症早期に内服することで、「重症化を防ぐ」限定的な効果が期待できる薬です。症状を軽くしたり、症状の期間を短縮するなどの効果は残念ながら知られていませんし、期待できません。どちらの薬を使うかは、状況に合わせてです。妊娠の疑われる方にはラゲブリオは禁忌ですし、パクスロビド(日本での商品名は、パキロビッド)は、他の薬と飲み合わせ(難しい言葉で言うとDrug-Drug Interaction(薬物間相互作用))に注意しなければいけません。また、年齢が高いほど、コロナの重症化リスクが高いことは、改めて言うまでのことはありません。
パクロビッドの方は、CYP3A4という薬物代謝酵素を阻害する(働きを邪魔する)リトナビルという成分が含まれています。したがって、CYP3A4の「基質」となる医薬品と併用した場合には血中濃度が上がり過ぎ、副作用が出やすくなってしまう危険性があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/CYP3A4
https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG02913
こちらを使用する場合には医師、薬剤師の方々によく相談しましょう。対策としては、常時使用している医薬品を一時的に使用を中止したり、投与量を減らすことが考えられます。
製薬会社の方は、CYP阻害をしない改良された医薬品の開発が必要ですね。私に言われなくても取り組んでいるとは、思いますが。
訂正:
Wikipediaには、リトナビルのCYP2D6阻害が書かれていましたが、他にはみられないため、それに関する記述は削除しました。最近アメリカのテレビでもファイザーのコロナ飲み薬の広告を見るようになりました。
症状が出たら5日以内に飲む、と宣伝されていますが、CMの情報は鵜呑みにせず、自分で情報収集することはこれからも必要ですね。