【解説】日本電産・永守会長、社長人事を「反省」する
コメント
注目のコメント
違う見方でコメントしたいと思います。これは、明らかに日本電産の”コーポレートガバナンス”の不備・機能不全だと考えられます。日本電産のガバナンス(監督)・リスクマネジメント・コントロール(内部統制)を踏まえ、現状の組織図を眺めてわかったことは
<現状>
・取締役会11名中、社外独立役員6名←これだけみれば、取締役会は機能しているように見えるが、取締役会の役割は執行サイドを”監視・監督する”ことであるものの、代表取締役会長は創業者永守氏
・取締役会を”監督・監査”するのは監査等委員会となっているが、このメンバーが社外独立役員6名とみられる⇨通常監査等委員会含む取締役会が執行側を監督・監査すべき
・CEOを選任する”指名委員会”が存在しない
<あるべき姿>
・米国型コーポレートガバナンスのセオリーでは、取締役会は①指名委員会(CEO選任等の役割)②報酬委員会(執行役員の報酬を決める)③監査委員会(外部監査人選定・内部監査CAE選任・内部統制監督)で構成され、すべて社外独立役員とすべきとされています。日本電産の場合、創業者の永守氏が、代表取締役会長(執行側を監督すべき立場)であり、執行側にやたらと口を出し、且つ後継者を指名すべき委員会が”存在”しないことが、盲点としてあるように思われます。
内部統制の中でセオリーといわれるCOSO Cube5つの構成要素:統制環境・リスク評価・統制活動・情報と伝達・モニタリングの中で、もっとも重要とされるのが”統制環境”であり、その統制環境こそ「組織の気風を決定し、組織を構成する人々の統制に対する意識に影響を与え、内部統制の他の4 つの構成要素の基礎をなすとともに、規律と構造を提供する」といわれトップの考え方・やり方そのものとされていますが、永守氏に対し社内のだれも反論できないでしょうし、社外取締役も何も言えないのではないでしょうか。したがい日本電産に投資をしていた機関投資家は統制環境を”リスク”と捉え、資金を引き上げ株が下落する等、永守氏の手腕・やり方に対して”不味い”と感じていると思われます。「(車載事業の)売上・利益が計画に対し未達であることが株価下落の原因(今後さらに下落するリスク)ではなく、CEO後継者を指名することができないコーポレートガバナンス不備・機能不全そのものがリスク」ということではないでしょうか。一定の規模以下の企業や、寡占化が進んでいない市場下、また製造業を中心にコストコントロール余地や、販売量調整の余地の少ない事業領域など、必ずしも経営の手腕の優劣が短期的な業績に連動し得ない事業領域は存在するかと思います。
特に車載モーターは、現在の主流のOEMの多くはこれが次世代の生命線となりえる可能性を認識しており、サプライヤーに生殺与奪を左右される状況はなんとしても避けたいと思っている可能性もあります。
もう少し時間軸を長く見れば、関さんは素晴らしい後継者として進めたのではないかと思うので、とても残念です。
家族経営企業など、後継者に一定の花道や助走のための活躍フィールドを用意して移譲するパターン(アイリスオーヤマの家電事業立ち上げや、スノーピークのアパレル事業)ではなく、こうして競争の中から後継者を見出すのは自然とても難しいのだと感じます。
もはや、孫・永守問題として、ケース討議の題材にできそうな空気になってきました。引き続きウォッチします。どんなサイズの組織であっても後継者育成には苦労するものですが、私は自分の期待通りのスペックを兼ね備えたマシンのような人はいないと思ってます。
歴史を見ても名君には優秀な腹心が数名いて、君主を支えながら国を守り、歴史を作っています。
絶対君主一人を探そうとするよりも、そうした「チーム」と呼ばれる支え合える関係と文化を作ることの方が、遠回りに見えて確実な後継者育成になるのではないかな、と思えてなりません。
それこそ短期でできるものではないので、忍耐強く一歩づつですかね。山本五十六さんの言葉の最後にもそう記されています。
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」