2022/9/8

【徹底分析】SaaS業界「冬の時代」はいつまで続くのか?

企業データが使えるノート 運営 代表取締役
コロナ禍でのデジタルシフト、リモートワーク推進が追い風になっていた近年のIT業界。
中でも、企業向けにクラウド型ソフトウェアを提供するSaaS(Software as a Service=サービスとしてのソフトウェア)系企業は、急成長を遂げてきた。
SaaS企業は、国内の株式市場においても、2020年の前半から2021年の10月頃までマーケットを牽引する存在だった。
しかし、アメリカが金利上昇局面に入ると、真っ先に売り込まれたのもSaaS企業だった。
アメリカは、2021年11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始。今年3月からは急激な利上げを続けて、アメリカの政策金利はどんどん上昇している。
金利上昇による企業評価への影響は、未上場の企業にも波及している。世界のユニコーンに投資するソフトバンクグループも、先日(8月8日)の決算会見で、孫正義会長がこうぼやいていた。
孫正義 インフレを抑えるために、世界中で中央銀行が金利を上げないといけない状況が続いています。そのような状況では、株式市場というのは、一般的に、大きく売り込まれる形になります。

投資を行っていく我々にとっては、まさに「冬の時代」だということになります。

冬がどのくらい続くのかは、わかりません。もしかしたら3カ月かもしれないし、3年かもしれない。
1年前とは環境が180度変わった国内SaaS業界の現在地、そして、最新のトレンドは何か。
ユーザベースグループのベンチャー・キャピタルであるUB Venturesのチーフアナリスト早船明夫氏が解説する。
INDEX
  • 「ARR100億円超え」6社に
  • 最大の課題は「大企業攻略」
  • 企業評価の変化で「ゲームチェンジ」
  • ARR100億円へ「3つの要件」

「ARR100億円超え」6社に

新興株を中心とした昨年末からの大幅な調整局面は、6月ごろから横ばいに転じ、一旦は底を打ちつつある。
8月に公表されたSaaS企業各社の最新決算を眺めると、売上成長のトレンドはおおむね変わらず、株価が年初来高値を更新する企業も出ている。
その一方で、未上場のSaaS企業、特に一定規模まで成長を遂げたミドル、レイターステージの企業では、資金調達に難航するケースも出始めている。
赤字をいとわず、人材や広告宣伝費に投資を行い成長率を最大化させるモデルから方針転換し、ランウェイ(事業継続期間)の確保に迫られるスタートアップも少なくない。
📍最新ARRランキング
SaaS企業各社が重要視する指標である「ARR(Annual Recurring Revenue=年間経常収益)」は、最新の決算を受けて、以下の通りとなった。
国内トップは名刺管理サービスに加え、請求書受領システム「Bill One」が好調な伸びを見せるSansanがARR200億円を目前としている。
freeeラクスマネーフォワードなど中小企業バックオフィス向けのSaaSを提供する各社も順調に業績を伸ばしている。
そして、「SaaSビジネスの大台」と言われるARR100億円超えの企業は、6社となった。昨年の同時期と比べると、2社(マネーフォワードとユーザベース)増えている。