【基礎】3分でわかる、「原発新増設」に走る理由
コメント
注目のコメント
わが国のエネルギー政策は、福島第一原子力発電所事故によって大転換を余儀なくされました。
福島事故前、原子力は日本の電気の約3割を賄い、さらに拡大していく計画でした。民主党鳩山政権が掲げた非常に野心的な(野心的と書いて、ほぼ不可能な、と読みます)温暖化目標を満たすために、政府は2010年当時、その後10年で9基、20年で14基の原子力発電所を新設するとしていたのです。原子力発電の建設に地元の方々の理解と同意を頂くのがどれほど大変なことかを知っている電力会社からもこの計画の無計画性は批判的に受け止められていましたが、発電部門からでるCO2を減らすには、再生可能エネルギーと原子力の両方を活用する必要があったのです。
それが事故を契機に、「原発政策の議論をおざなりにしたまま、環境政策が論じられてきた。」わけです。より正確に言えば、原子力という手段を外したうえで、より高い温暖化目標を掲げたわけです。脱炭素と脱原発の二兎は追えません。
この10年で再エネを十分にやっていればと感じる方も多いでしょうが、日本のこの間の太陽光発電の増え方は世界に例を見ないスピードです。太陽光発電導入量では世界第3位にまでなっていますが、1億2000万人を超える人口と製造業主体の産業構造を支えるのは無理です。
現実的に原子力はやらざるを得ない。であればいかに安全性を高めて、いかにコスト安く原子力を使えるようにするかを議論すべきだったのであり、避けて通れないものにようやく政治が向き合ったというところでしょう。
その辺を十分理解して書かれた記事だと思ったのですが、それだけになぜ、新増設に『走る』という言葉を使ったのかちょっと違和感です。
課題も山積しています。原子力損害賠償制度、原子力防災力の向上、技術・人材の維持、廃棄物処分の課題などです。また、福島の復興や廃炉は着実に進め、福島の方たちへの説明も果たしていかねばなりません。
ただ、これらは技術の課題というより、多くは政治の課題です。
ここからが政権、そしてエネルギー行政に携わる方たちの正念場だと思います。
なお、昨日の会議に関しては、原子力に注目が集まるのですが、再エネ活用の加速化に向けた系統整備や蓄電池などについても取り組みを進めるよう首相から指示がありました。再エネと原子力という、化石燃料を使わない電源を主力にしていくということです。「海外では」という紹介で、北米かヨーロッパのことしか書かれない、という場合は非常に多いですが、原発を最も多く新設しているのは中国です。
中国の現有の原発は51基、2021~2025年の計画では、建設中が19基、計画ではさらに24基新設されるはずで、達成されれば、米国を越えて世界1の数になります。
インドでは、運転中の原発は23基、建設中が6基です。計画ではさらに6基が新設されるはずです。主にロシアの国営企業が受注して新設が続いています。
インドは、これまで石炭火力発電主力でやってきていますが、とにかく電力が足りないので、原発は有力な電力確保の手段です。
他にも、トルコがロシア企業に、パキスタンが中国企業に、原発を発注しているなど、アジアでこそ原発の新設が相次いでいます。中国企業とロシア企業が、原発建設の世界シェアを大きく伸ばしています。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/da698de79441cff3.html
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2021/12/worldnuclear20211202.pdf日本の電力価格が10-35%上がっていると出ていますが、欧州の電力価格はこの1年で5倍になっています。「先進国とは思えない電力不足」と筆者がコメントしているが、電力価格が1年で5倍になるのもとても先進国とは思えない、構造的な大失策です。欧州の電気代は今や日本の3-4倍に達していますが、そのことに触れる日本メディアは皆無。
LNG価格は上がってますが、世界のLNG生産量の7割はブレントまたはドバイ原油の価格に連動した長期契約で取引されており、日本が主に購入しているのはこの長期契約玉です。欧州は残りの3割のスポット市場から購入せざるを得ず、欧州のガス価格の指標であるTTFは今や原油1バレル換算で300ドルに迫る値段です。ブレント原油は100ドル強なので、日本のLNG購入価格はそれだけでも欧州に対して相当優位なんですけどね
(追記)
今日TTFの1ヶ月先物は90ドルを突破。これだと原油1バレル換算で500ドル。もう無茶苦茶