秋葉原殺傷、死刑執行 発生14年、古川法相命令
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死刑執行のニュースは、あまり多くの人の心には響かないかもしれません。「○○年ぶり」「○○政権で×回目」といった定型の報じ方に違和感を感じる方もいるでしょう。それでも、日常生活の中で普段まず考えることがない「死刑」についてちょっと考えてみるきっかけにはなります。なぜ日本はまだ死刑制度を持っているのか、そもそも刑罰って何なのか……ほんの数分でも、考えをめぐらせてみることをお薦めします。
日本では死刑制度に賛成している方が少なくありませんが、世界の多くの国は廃止の方向に動いています。死刑に積極的なのは独裁的な形態の政治を行う国と宗教的な見地から「報復」を妨げない考え方を有する国に偏っています。
殺人など人に危害を加えて成立する凶悪犯罪は女性によるものは男性に比べて少なく、死刑判決を受ける女性は世界的に少ない中、中東諸国などで比較的多いことは女性の権利の認め方と関係していると言われています。最近ミャンマーで死刑が急増しているのは独裁化の手段として使われていることと関係しています。正規と非正規の分断、その歪みと格差が暴発した事件と受け止められました。その後の捜査や取材で、ネット掲示板の中の居場所をなくした死刑囚が、自暴自棄になっていたことも伝えられました。リアルとヴァーチャルの境目という議論も起こりました。政治学者でありながら、この事件を追跡した中島岳志さんの『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』は、ネット掲示板の書き込みから自らが追い込まれていく元死刑囚の心理状態を見事に描いています。単純化することは危険ですが、「拡大自殺」の事件だと私は考えています。この後も、京アニ放火殺人、大阪クリニック放火殺人、小田急・京王線無差別殺傷事件など「拡大自殺」とみられる事件は増え続けています。そして容疑者は高齢化し、全世代型の犯行になりつつあります。
生きづらい社会を改善することが、同種の悲劇を防ぐ道です。あまりにも遠い道ですが。