2022/7/25

【直撃】大企業が頼る「メンヘラ御用達」テック企業の正体

NewsPicks 編集部 記者・編集者
メンヘラテクノロジーという会社をご存じだろうか。若い女性に人気のチャット相談アプリ「メンヘラせんぱい」を運営する企業だ。
社長の高桑蘭佳さんは、東京工業大学の研究室に籍を置く研究生で、自他共に認める「メンヘラ」でもある。「彼氏を束縛するために起業した」「彼氏の経営する会社をM&Aしたい」など、奇抜な発言でメディアに登場することも多い。
社名から事業内容、起業理由まで、異色すぎる企業だが、実はそのサービスに、若い女性だけでなく、大企業も注目するようになりつつある。
メンヘラの悩みをテクノロジーで解決するとは、どういうことなのか。何が大企業に「刺さって」いるのか。高桑さんを直撃した。
INDEX
  • 彼氏を束縛したくて起業した
  • メンタルヘルスではなく、承認欲求
  • 企業にもメンヘラが増えている
  • 幸せに病める世界をつくる

彼氏を束縛したくて起業した

──「株式会社メンヘラテクノロジー」はユニークな社名ですが、どんないきさつでできた会社ですか。
大学院の修士1年生の時にガイアックス(スタートアップ支援企業。メンヘラテクノロジーの株主の一社)が主催したビジネスコンテストに参加して、法人化の権利みたいなものを獲得したのがきっかけです。
起業するつもりはなかったんですが、結果的に起業したのは、彼氏の影響ですね。
当時、彼氏を監視して、束縛して、自分の思い通りにするために、彼が経営する会社の社外取締役にしてとお願いしてたんです。一緒に社員旅行にも行きたかったし。
でも、社員のことを考えると役員にはできないって断られて。起業してサービス作るとか実績があればいいよ、みたいなことを言われたので、起業しました。
私自身、メンヘラだとよく言われていたので、自分自身の課題を解決するようなサービスを作りたい気持ちがあって、メンヘラテクノロジーという社名にしました。
最初に実証実験をしたのは、メンヘラの女子学生と社会人の食事会マッチングサービスの「MM」(ミリ、現在はサービス終了)です。
当時、「暇で病む」ことに課題感を持っていたんです。退屈しやすい傾向が強い人は、絶望感や孤独感を感じやすく、病んでしまうという仮説があって。
暇で病むくらいなら、食事会みたいにライトな感じでOB訪問すれば視野も広がって、病まなくなるんじゃないかって考えたんですけど、炎上しちゃったこともあって、事業化はしませんでした。
そこからピボットして作ったのが、病んだときに、気軽に、安心して使える、匿名のチャット相談サービス「メンヘラせんぱい」です。
──メンヘラせんぱいはどんな人が利用していますか。
ユーザー(相談する側)登録数は1.2万人、聞き手の「せんぱい」は約800人が登録しています。
ユーザーは10代後半から20代が多くて、一番多いのは25歳くらい。30代、40代の方にも使っていただいていて、50歳の方もいます。昔は女性限定でしたが、今は相談する側も、相談を受ける側も性別は問いません。
ユーザーの利用パターンは大きく2つあります。1つは、感情を吐き出すパターン。嫌なことがあった、ちょっと聞いてほしい、など感情が爆発しそうな時に、わーっと吐き出す使い方です。
もう1つは雑談です。暇、寂しい、かまってほしい、そんな感じで話し相手が欲しい時に使ってもらう。継続的に長く使っているコアなユーザーさんはこちらのタイプが多いです。
根本的に、(話を聞いてもらう相手は)誰でもいいんですよね。絶対的に信頼できる人に話したいわけではなくて、誰でもいいから、話しやすい人、話を分かってくれる人に話を聞いてほしい、みたいな感じで使ってもらっていると思います。
私自身もメンヘラせんぱいのユーザーです。
私、友達が少ないので、友達を作ろうと頑張っているところで、メンヘラせんぱいに「仲良くなりそうな子がいるんだけど、誘ってもいいのか」みたいなことを相談したり、友達になりそうな子にメッセージを送る前に、うざいと思われないか確認してもらったりしています。
気軽に連絡を取れるリアルな友達がいないんですよね。彼氏にもうざいって言われてしまったので、愚痴を言える相手がいない。それでメンヘラせんぱいを使っている部分はありますね。

メンタルヘルスではなく、承認欲求