[東京 9日 ロイター] - 12月ロイター企業調査によると、1ドル120円程度までの円安では、海外生産・調達の国内シフトを検討する企業が全体の9%にとどまることがわかった。業種別では、電機がゼロとなった半面、輸送機械は4割が検討予定と回答した。

一方、円安を受けて輸出価格を下げる動きは少なく、数量より採算を重視する姿勢が鮮明となっている。日銀の追加緩和は、好影響があるとみる企業は少なく、悪影響があるとの声も出ている。

この調査はロイター短観と同時に同じ対象企業(資本金10億円以上の企業)に実施。調査期間は11月25日─12月3日。回答社数は400社ベースで250社程度。 

<国内シフト限定的、輸送用機器は4割が検討>

1ドル115─120円の円相場を前提に、海外生産や調達の国内シフトを検討している企業は全体の9%にとどまった。「検討予定はない」が86%、「その他」が5%だった。

業種内の割合をみると、電機は「すでに国内からほぼ撤退済み」、「長年にわたる円高対策の結果であり、急激に円安が進行したからといって国内に生産を戻せるような体制にない」として、検討企業はゼロだった。機械でも「国内販売は国内生産、海外販売は海外生産でまかなう」など、為替の影響を受けない「地産地消」を原則とする動きがみられ、検討企業は10%にとどまった。

調達についても120円までの円安では「(海外調達の方が)国内生産よりコストが低い」(情報サービス)といったレベルにあるもよう。「円安が恒久的とは考えていないし人件費等のコスト差が大きい」(運輸)との理由もある。

国内シフトの検討割合が最も高かったのは輸送用機器で42%。次いで繊維・紙パの25%、食品の22%となった。輸送用機器では「さらに円安が加速した場合には、国内調達品を採用した方がコストメリットがある」、「国内仕事量確保のため、一部を国内へ戻すことを検討中」としている企業が複数ある。ただ「国内では対応できない」、「取引先が国内に戻らない限り難しい」など、半数以上は検討予定なし、としている。

<輸出数量拡大にも消極的>

円安を生かして輸出数量を伸ばすという従来の企業行動も、今回はほとんど見られない。

円安進行で円建て受け取り価格が増えることになり、その分を値下げすれば現地での価格競争力が増して輸出数量の拡大につながる可能性もあるが「値下げにより販売量を伸ばす」(化学)、「この機械に販路を拡大する」(機械)といった回答は9%にとどまった。

一方で86%の企業は、価格を据え置くと回答している。理由として「過度に円安が進んでいるので、少し様子を見たい」(機械)、「一時的要因では下げられない」(電機)など、足元の円安進行の持続性を見極めたいとの声が聞かれる。「輸出品の原材料は海外から調達しているものが多く、コスト(採算)への影響は限定的」(輸送用機器)といった指摘もある。  

<追加緩和は企業にメリット少なく>

日銀が10月31日に追加緩和を決定し、それ以降さらに円安・株高が進行したが、多くの企業は事業に対するメリットを感じていない。

事業に「かなり好影響」と回答した企業は1%、「やや好影響」は24%で合計25%が追加緩和は自社にとって好影響と回答した。円安による為替差益や、設備投資環境の改善、株価上昇による資産効果などが理由となっている。

一方で「かなり悪影響」が3%、「やや悪影響」が9%となり、本来、景気刺激的であるはずの金融緩和が、かえってビジネスに悪影響を与えたとの回答が合わせて12%となった。

代表的な輸出産業である輸送用機器でも「やや悪影響」が25%を占め、「やや好影響」の17%を上回っている。「材料価格上昇」、「輸送コスト増加」が背景となっている。

最も多かったのは「どちらでもない」で63%に上った。「銀行の国債調達と日銀買い入れの中で資金が動いている」、「実体経済には影響なし」などあくまで金融市場の中での影響にとどまるとの指摘もある。

株価上昇は「金融資産を持っている人には資産形成で魅力的かもしれないが、一般の消費者にはメリットが薄く、すぐに消費意欲を喚起するものではない」(小売)など、売り上げや収益への影響は感じられないとの声が多い。

7─9月期国内総生産が2四半期連続でマイナス成長となったことも踏まえて、自社の事業からみて景気の現状を聞いたところ「踊り場にある」との回答が55%と最も多くなった。「持ち直しつつある」が23%、「好調に推移」も8%となり、企業自身は4月の消費税引き上げ以後の景気は回復局面にあり、足元一時的に停滞しているとみていることがうかがえる。

(中川泉 編集:石田仁志)