進撃の中国IT

自社ルーターを核とするスマート展開とは……

オープンか否か、そこが問題な百度スマートホーム

2014/12/9
廉価スマートフォンブランド「シャオミ」、セキュリティソフトブランド「奇虎360」に続き、中国のIT企業「百度」がスマートホーム製品に注目し、負けずと力を入れ始めている。オンライン・モール「Tモール」上にある百度のフラッグスタッフショップをのぞくと、独自開発製品や、他社との共同開発製品などすでに多くのスマートホーム製品がリリースされている。

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百度のスマートシリーズ「小度」製品続々

百度が関わっている製品には、昨年販売されて人気となっている「小度」携帯Wi-Fi[訳注:パソコンをスマホやタブレット向けのWi-FiアクセスポイントにするUSB接続の小型キット]、「小度」ルーター、「小度」TV[訳注:スマホ画面をテレビに投影することができるUSBキット]などがある。

さらに、スマート秤、スマート縄跳びなど他社との協業製品のラインナップも充実している。いずれも昨年から今年にかけて、百度が推進してきたスマートハードウェア製品連盟の成果だ。

現在、百度ではヘルスケアに着眼したウェアラブル製品用の「Dulife」のほか、ハードウェアイノベーターと協力を進めるために、「百度智家」(百度スマートホーム)というプラットホームが準備されている。

Dulifeは医療、健康関連のスマートデバイス製品に特化したもので、一方の百度スマートホームはスマートホーム関連のハードウェアイノベーター向けのオープンプラットホームとなっている。

自社製ルーターを核にスマートサービス展開

その百度スマートホームだが、オフィシャルサイトでは、「ルーターを経由するオープンプラットフォーム」と明言している。どうやら百度もシャオミ同様、自社製ルーターをスマートホーム製品の連携の中核に据えているようだ。

中国メディア「中国新聞網」によると、百度スマートホームではハードウェアイノベーターに「百度数据工廠」、「百度大脳」などのサービスへのアクセスを認めている。そしてイノベーターたちは、百度がハードウェアを通じて収拾したユーザーのデータを解析し、そのルールを見出すことができる。

百度大脳は今年始められた新規プロジェクトで、コンピュータ技術を使って人の脳をシミュレーションするものだ。この人工知能はすでに2〜3歳児のレベルに達したと百度は発表している。

[訳注:「百度数据工廠」「百度大脳」はともに百度が展開するクラウド・ビッグデータサービス。「百度数据工廠」はデータ処理、「百度大脳」はインテリジェンスデータの抽出や機械学習などを行う]

また百度スマートホームでは、製品に音声制御やハンドサインによるインタラクティブな制御の能力を与えることもできる。

百度スマートホームは、伝統メーカーによるスマートホーム製品開発のハードルを下げることを目標の一つに挙げている。ハイアール、美的などの伝統的電機メーカーが「スマート」という言葉に飛びついて次々と「スマート」にひっかけた製品を開発しているものの、現実に成果をあげたとは言い難い。

伝統メーカーとスマートホームとのぬるい関係

問題を整理してみるとこうなる。

(1)たんにネット接続機能を付けただけの製品では価格が大きく跳ね上がり、消費者は受け入れない。

(2)伝統的製造業は、設備の研究だろうが、金型生産だろうが、大量の資金と精力を注いでいる。スマートホーム製品生産では誰がこのコストを負担するのか?

(3)オンライン機能がついても、いかにネットを利用するのか、ユーザーと交流し、更に良質なサービスを提供するか? 伝統的メーカーはその能力を持てていない。そしてその技術上の不足を埋めるには大量の資金が必要となる。

筆者が接触した伝統的メーカーの一部は、スマートデバイスに対して依然として、「おもちゃのようなもの」という印象から抜け出せていなかった。しかし、実際の行動上には焦りが見え隠れしている。というのも、もし本当にバカにしているなら相手にせず、批判もしないはず。批判するのはそれを気にしていることの証明だ。

これもまた百度スマートホームにとってのチャンスかもしれない。ただ、パートナー企業は小度ルーターへのアクセスに同意することが前提となる。これはシャオミのやり口とそれほど違いがない。つまりオープンをうたいつつ、実際には半開放というのがふさわしいだろう。

「パートナーとなれるのは優秀なメーカーだけです」

消費者の立場から考えてみる。果たして消費者はあるネットアクセス用の機器を使用するために、わざわざ百度のルーターを購入するだろうか?

ハードウェアイノベーターの立場から、百度スマートホームの担当職員に尋ねてみた。すると……

「パートナーメーカーから費用は徴収しません。ただし、パートナーとなれるのは優秀なメーカーとハードウェアだけです」

これが返ってきた答えだった。

※本連載は毎週火曜日に掲載する予定です。

(執筆:陳一斌/ifanr.com 翻訳:高口康太 写真:@iStock.com/Greyfebruary)

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