[東京 3日 ロイター] - タカタ<7312.T>の高田重久会長兼最高経営責任者は、米国時間の2日に発表した欠陥エアバッグ問題に関する声明の中で、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)から要請を受けていた全米へのリコール(回収・無償修理)拡大について明言を避けた。

同局は「失望感」をあらわにし、次の措置を検討すると表明。3日に開かれる米下院公聴会を前に、タカタがNHTSAの心証を害した感は否めず、さらに厳しい立場に追い込まれそうだ。

<全米拡大要請は「理解」>

高田会長は声明の中で、これまでの調査分析などでの協力姿勢を強調するとともに、「さらなる取り組みを行う義務がある」として、独立した品質保証委員会の設置や、助言役として元米運輸省長官らを迎えるなどの対策を新たに打ち出した。

だが、全米リコールについては「NHTSAが強く求めていることを理解している」と述べる一方、要請を受け入れるかどうかは明確にせず、NHTSAや自動車メーカー各社と「緊密に協力する」という表現にとどめた。

声明の真意についてタカタは、基本的なスタンスは今までと変わらず、全米リコールに「イエスかノーかという話になるとどちらでもない」と説明、「自動車メーカーがリコールを全米に拡大するのであれば「全面的に協力する」として自動車メーカー各社に判断をゆだねるという受け身的なものだった。

<欠陥認定には応じられない>

NHTSAはロイターに対し、「タカタの返事には失望した」と回答しており、「タカタは運転者の安全を確保する責務を負っており、全米リコール以外はその責務を果たすことができない」と強い姿勢を示した。日本の政府関係者も、タカタ会長の全米リコールに対するコメントは「何をどうしたいのかわかりにくく、印象は良くない」と話す。

米国では事故が多発している南部を中心とした高温多湿の一部地域で原因究明に向けた調査リコールを実施しているが、NHTSAはこのリコールを全米に広げるよう、タカタと自動車メーカー各社に強く求めている。2日までにリコールに応じない場合は対象車両1台につき最大7000ドル(約82万円)の罰金を課す可能性までちらつかせていた。

ただ、全米規模のリコールを容認することは一部地域での部品の欠陥を事実上、認めることにもなりかねない。タカタ側は、一部の対象地域で「調査されている部品は欠陥品ではない」とし、「欠陥認定には応じられない」との構えだ。

約280万台の調査リコールを実施し、タカタの最大納入先であるホンダ<7267.T>は、NHTSAの全米拡大要請に対して検討している段階だ。全米リコールに各社が応じない場合、「最悪の事態だ」と別の政府関係者も先行きを懸念している。

タカタ製エアバッグをめぐっては、作動時にエアバッグを膨らませる部品が破裂し、飛び散った金属片が突き刺さり、乗員がけがをする恐れがあるとして、世界で1600万台以上がリコールされている。国内ではまだ死傷者は出ていないが、海外では少なくとも死亡事故が5件発生しており、犠牲者が4人と最多の米国では特に社会問題化している。

3日の米下院公聴会では、前回11月20日の米上院での公聴会で証言したタカタ品質本部の清水博シニアバイスプレジデント、北米ホンダ上級副社長のリック・ショステック氏のほか、トヨタ自動車<7203.T>、独BMW<BMWG.DE>の北米拠点の幹部らが出席して証言する。事故の原因や欠陥を把握した時期などについて各社が証言を求められる見通しだが、前回に続き、再び厳しい追及を受けることが予想される。

(白木真紀 取材協力:金昌蘭、斎藤真理 編集:北松克朗)