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半年で時価総額が2倍に?

ブルームバーグのセレーナ・サイットは本日、自動車の相乗りサービスを提供するウーバー・テクノロジーズについて、350億~400億ドルという企業評価に基づく資金調達で合意が近いと報道した。株価バブルという「根拠なき熱狂」の象徴として同社の名前を挙げたくなる人も出そうなニュースだ。

なにしろウーバーは、6月に約170億~180億ドルという評価額で資金を調達している。わずか半年で時価総額が2倍になる企業というのは極めて稀だ。評価額が350億ドルとなれば、ウーバーの企業価値は、過大評価されているとの声もあるソフトウェア株であるセールスフォース・ドットコムと同じ水準になる。

とはいえ、ウーバーの莫大な評価額は、同社のリーチと有用性を示すものでもある。IT企業が、われわれのオフライン生活にとって欠かせない存在となることで、いかに価値を高められるかを反映する例だ。

例えばフェイスブックは、われわれが使うコンピュータや携帯電話で巨大なネットワークを築き、時価総額約2160億ドルという、一般投資家にとって最高のネット企業のひとつになったが、結局のところ同社がやっていることは、情報や感情、話題をインターネット上で転送しているだけだ。

一方、アップルの「iPhone」は、携帯情報端末から、「現実世界で使えるリモコン」への転換を遂げようとしている。われわれの医療健康情報を追跡し、商品代金の支払いを処理し、そして将来的には家電を結び付けたり制御したりできるリモコンだ。アップルの株価が過去最高値を更新し、時価総額が一時7000億ドルを突破した理由には、そうした背景もある。

ウーバーの場合、一般道や高速道路の世界的ネットワークを駆使して人間や車両を運ぶ企業として、脆弱な公共交通インフラを補完するサービスを提供している。また、賃金の伸び悩みや失業率の高止まりもあって、お金に余裕のない人たちにとっては、ウーバーの配車サービスで運転することは魅力的な選択肢になっている。これらすべての要因が、ウーバーのような企業が成長する上での助けになった。

そして同社は、現在までに、グローバル規模の巨大なロジスティックス・ネットワークを築ける下地を作ってきた。その観点から見ると、ウーバーの企業価値がデルタ航空や鉄道会社のCSXと同じ水準になったとしても、それほど驚くことには見えない。理論上は、ウーバーが、個人輸送ですでに積極的に打って出ているように、商用輸送でも攻勢をかけない理由はほとんどないのだ。

さらにウーバーは、利用者に関する膨大なデータを蓄積することに成功したソフトウェア会社でもある。確かに、同社のデータ収集慣行が批判浴びているのは事実だが、われわれの現実世界での生活に関して同社が持っている情報が、ソーシャルネットワークでクリックされる「いいね!」からフェイスブックなどの企業が収集しているものと同じくらい価値があるという事実は変わらない(もしかしたら、ウーバーのもつ情報の方が価値があるかもしれない)。

あらゆる企業がデータ主導型に転換

ウォルマートからゼネラルモーターズ(GM)まで、あらゆる企業が、小売事業や製造事業をデータ主導型に転換しようとしている現在、ウーバーは、いくつかの重要な点ですでに彼らを圧倒している。

ウーバーは過大評価されていない、と言いたいわけではない。たとえば規制当局が、同社が保険契約の内容を変更するべきだとか、ドライバーを従業員として扱うべきだなどと判断すれば、同社の企業価値に大きなマイナスの影響が及ぶことは間違いない。それでもウーバーは、われわれのオンラインとオフラインの世界を橋渡しすることに長けた、数少ない新興企業のひとつだ。それが、投資家たちが同社に入れ込む一因となっている。

相乗りサービスで競合するリフト(Lyft)、宿泊先レンタルサービスのエアビーアンドビー(Airbnb)、ローン仲介プラットフォームのレンディングクラブ(LendingClub)も、現実世界にリーチしている企業の良い例だ。これらの企業も、評価額は数十億ドル規模に達している。

レンディングクラブが2014年12月に新規株式公開(IPO)価格を設定する際には、投資家たちが莫大な収益乗数(企業価値を売上で割ったもの)で資金を投じるのを目にすることになるかもしれない。ただし、個人投資家たちは、現時点で最も有力な成長株はウーバーであり、同社のソフトウェアは競合各社のサービスより格段に優れていると見ている。

とはいえウーバーは、規制当局や従業員、ドライバー、顧客の要求を満たすことによって、現実のオフライン世界でも成功できることを証明する必要がある。同社は最近、メディアとの敵対関係からプライバシー上の懸念まで、さまざまな問題で批判を浴びている。

ウーバーがドライバーへのチップについて顧客を欺いていたとされる問題では、このほど連邦判事が訴訟手続きの一環として、ウーバーのトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)に対し、自らのEメールを開示するよう求めた。ウーバーがこれらの問題にどう対処するかは、同社の莫大な評価額に影響を及ぼすだろう。

いずれにしろウーバーは、オフラインにおいて不可欠な存在感を示すことによって、同社の価値の相当部分(もしかすると全部)を稼ぎ続けている。他の新興企業は、そこから学ぶことがあるだろう。

原文:Is Uber Really Worth $40 Billion?(English)

(原文筆者:ケイティ・ベナー、原文編集者:ティモシー・L・オブライエン、写真:bloomberg、翻訳:湯本牧子、合原弘子/ガリレオ)
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