2022/6/27

【全解説】40兆円。TikTokを生んだ「不可能経営」の秘密

NewsPicks NY支局長
TikTokが世界を呑み込んでいる──。
まず、2019年に米国で、平均利用時間(38.6分)でインスタグラム、2020年にフェイスブックを抜き去ると、すでに両者を足してもかなわないほどになった。2021年には、なんと世界で最も人気のウェブサイトの称号をグーグルから奪い去っている。
さらに2022年は、①とうとう利用時間であのYouTubeを超える見通しだ。
すでにZ世代では、40%以上が毎日3時間以上をTikTok上で過ごしているといい、合計視聴時間でもNetflixをすでに大きく上回ったほどだ。
これはまさにメディアの歴史に刻まれる快進撃といっていいだろう。
実際、TikTokを運営するBytedance(バイトダンス)は、中国はおろか、世界で最も価値のあるスタートアップとなっている。
バイトダンスの売上高は2021年に580億ドル(約7兆8000億円)に達し、昨年は評価額が4000億ドル(54兆円)に達したと報じられた。今年のテック低迷を経てなお、40兆円は超えると言われている。
ところが、である。
これだけ世界を揺るがす企業にもかかわらず、実のところ、このモンスターアプリを産んだバイトダンスの「経営の神髄」についてはあまり知られていない
一体、なぜアジア発企業が、世界中を熱狂させるアプリを開発できたのか──。
NewsPicksは今回、その謎を解き明かすに最も適した人物に直撃した。中国とシリコンバレーのイノベーションに精通するサンフランシスコ大学のロジャー・チェン教授だ。
チェン教授は、今年ハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した論考がテック界隈で大きな話題になった。彼が明かす「バイトダンスの秘密」を10のポイントとともにお届けする。
INDEX
  • ①圧倒的な「成功率」に着目せよ
  • ②驚愕の「使いまわし戦略」
  • ③「超少人数」のプロダクト開発
  • ④3年間で「140」ものアプリ
  • ⑤「超高速OKR」で驚かす
  • ⑥バイトダンスの弱点

①圧倒的な「成功率」に着目せよ

──TikTokの快進撃、そしてその運営元のバイトダンスの勢いが止まりません。
最初にお伝えしたいのが、バイトダンスは非常にユニークな企業だということです。
米TikTok事業のCEO、Shouzi Chew氏(写真:Christopher Goodney/Bloomberg via Getty Images)
というのは、中国企業が、カルチャー系のプロダクトで、国境を越えて成功させたことは、これまでほぼありませんでした。これまでの成功事例は、大半が電子機器などのハードウェアでしたからね。
すでにバイトダンスは、米国・欧州市場で最も成功した中国企業の一つです。アジアでのTikTokの成功も踏まえると、世界トップといってもいい。
では、なぜバイトダンスはここまで成功できたのでしょうか。