2022/6/24

【解説】米「ウイグル禁輸法」が中国産業界に及ぼす甚大な影響

INDEX
  • 大量に売れ残った新疆綿
  • 新法の「ドミノ倒し効果」
  • 事実上の「貿易禁止令」
  • 八方ふさがりのアパレル産業
  • 強気のポリシリコン産業
  • EUの対応次第で「一寸先は闇」

大量に売れ残った新疆綿

次の収穫期が3カ月後に迫ったいま、中国最西部の新疆ウイグル自治区の紡績工場には、約300万トンの綿花の在庫が残っている。この時期の在庫としては、通常より100万トン以上も多い。
このことは、昨年秋に収穫された綿花の半分以上がまだ売れていないことを意味する。
「新疆綿は、かつて世界で最も高価な綿花でした。いまや最も安い綿花になり、それでも誰も買いません」と、新疆南部にある紡績工場の経営者は話す。
「1トンの綿花を売るごとに、2000元(300米ドル)の損をすることになります」
この事態は、米国の新法「ウイグル強制労働防止法」(ウイグル禁輸法)の影響によるものだ。同法は、新疆ウイグル自治区からのすべての製品の輸入を、その生産に強制労働が関与していないことを示す証拠がない限り、事実上禁止するものである。
新法は6月21日に施行されたが、それ以前から中国の綿・繊維産業に、米国が意図したとおりの効果を与えてきた。
「川下の顧客、特に海外市場を重視する顧客は、これ以上(新疆綿を)使う勇気がないため、買い控えが起きています」と、前出の工場経営者は話す。
(Zhang Xiuke/VCG via Getty Images)