2022/6/28

いま、問われるリーダーの素養。成果を出す「チームの作り方」

NewsPicks, Inc. Brand Design Editor
個人の価値観が多様化するいま、自身の働き方や仕事の進め方を見直す人が増えている。それは、徹底した成果主義の価値観でも知られるコンサルティング業界においても決して例外ではない。そんななか、「現代のコンサルタントは、個の力だけではなく、チームで成果を出す力が求められる」と語るのがPwCコンサルティングのディレクター 藤倉麻実子氏とディレクター 大森健氏だ。いまコンサルタントに求められている能力とチームで成果を出すための秘訣、そして同社で得られる成長や学びを二人に聞いた。

多様な視点が求められる時代

──お二人はコンサルティング業界で15年以上のキャリアを積まれていますが、この数年で顧客がコンサルタントに求める役割やスキルはどのように変化したと感じますか。
藤倉 以前はどの案件にも明確な課題があり、コンサルタントはそれに対する答えを提示するのが役割でした。
 私が専門とするサプライチェーンの領域であれば、昔は「いかに速くモノを届けるか」といったシンプルな問いが中心でした。私たちもその1点にフォーカスして考えれば、クライアントに正しい方向性を示すことができました。
 ですが最近は、気候変動問題や国際情勢の変化、ステークホルダーの多様化など、考慮しなければいけない事象の範囲が広がっています。
 モノを速く届けることを追求しながら、CO2の排出量を削減して、コロナ禍にも対応しなければいけない。このような複雑な状況では、そもそもの前提から見直し、過去の事例にはないアプローチを考える必要があります。
製造業のクライアントを中心に、サプライチェーン領域におけるプロジェクトに数多く従事。構想策定から改革実行・定着まで、業務とシステム、経営と現場のバランスや整合性を保ったプロジェクトマネジメントを得意とする。
 そのためには他のメンバーやクライアントと一緒に考え、お互いにアイデアを出し合いながら、ともに答えを見つけていくことが必要となる。コンサルタントも個の力だけで何かを成し遂げようとするのではなく、多様な視点を持ったチームによる課題解決を目指すことが求められるようになりました。
大森 私も最近は、すでにある問題の解決策を提示するのではなく、課題を設定するところから支援するプロジェクトが増えています。
 その際コンサルタントに求められるのは、自分なりの視点から物事を捉えること。そして潜在している課題やこれから顕在化するであろうニーズを特定し、仮説を立てること。
 その業界やビジネスに対する知見も大切ですが、他の人にはない“尖った”視点でものを見て、発想を広げることが重要です。足りないものを補おうとするより、尖った部分にさらに磨きをかけることで、より高いパフォーマンスが出せる。
 以前はコンサルタントに必要な基礎的スキルを揃えれば一定の成果を出せましたが、現在は自分ならではの尖ったものがないと、クライアントの期待に応えるのが難しい時代です。そのため今の時代のコンサルタントは、自分が得意な分野をより伸ばしていくことが重要だと思います。
PwCのメンバーファームを含む複数のコンサルティングファームを経て、PwCコンサルティングに再入社。ヘルスケア業界を中心とした業界横断でのデジタル領域の成長戦略、DX、新規事業を得意とする。現在はヘルスケア部門、テクノロジー・メディア・情報通信部門のアカウントを担当し、ヘルスケア部門のデジタルリーダーを務める。
──こうした変化に対応するには、コンサルタントの価値観も時代に合わせて刷新する必要があるのでしょうか。
大森 誤解を恐れずに言えば、「コンサルタントはもっと失敗していい」のではないでしょうか。
 もちろんクライアントのためにも失敗しないことがベストですし、失敗しないための努力を怠らないのは前提です。
 それでも今は明確な課題が見えないところからスタートするので、ベストプラクティスも存在しない時代です。正解がないのだから、まずは仮説を立てて、やってみるしかない。そこから学びを得て、また次の取り組みをやってみる。
 まずは挑戦することで、その先の一歩へ踏み出し、成功まで導くことができるのです。失敗を恐れて、過去の事例を漁っているだけでは、そこから新たな価値や答えを社会に示すことはできません。
 失敗を怖がらずに、クライアントとともにトライ&エラーを繰り返すことが大切だと考えています。
藤倉 私自身は、これまで以上に「チームで成果を出す」ことを意識するようになりました。
 もともとPwCにはチームワークを大事にするカルチャーがありますが、自分がマネジメントの立場になったこともあり、今はいかにメンバー全員でクライアントに貢献するかを重視しています。
 個人がスキルを高めることは当然大事ですが、人間が一人でできることには限界があります。
 でも各メンバーの強みや個性をうまく融合させれば、1+1を3にも10にもできます。尖った部分があれば、一方で不足しているものや苦手なこともあるわけですが、それもメンバーがお互いに補い合えば、チームとして大きな価値を出せる。私も管理職として、メンバーの個性をどう組み合わせるのがベストかを常に考えています。

成果を出すチームの条件

──「成果を出すチーム」の条件とは何だと考えますか。
藤倉 私は「自主性」と「チームワーク」が条件になると考えています。
 一緒に働くメンバーやクライアントが何を考え、何を求めているのかを意識し、自ら率先して周囲とコミュニケーションする。個人だけでは解決が難しい問題も、メンバーが助け合い、チームで成果を出すために動けるような環境が大切だと思います。
 そのためにも、仕事以外の会話や交流は重要だと考えています。たとえば、私のチームでは、社内ミーティングの冒頭やランチの時間などを利用して、メンバー同士が雑談する場を設けています。互いに人としての魅力や多様な価値観を知ることは、自分にはない新たな視点を育む機会にもなります。
 またコロナ以降はリモートワークが主体になり、孤立感や閉塞感を感じやすい状況なので、メンバー間で相互理解を深めながら、チームへの帰属意識を高められる環境作りを重視しています。
──チームの成果を最大化するために大切にしていることを教えてください。
大森 チームの成果を高めるには、個々の尖ったスキルをいかに伸ばすかを考えたうえで、プロジェクトのアサインや役割分担をすることが大切だと考えています。
 自分らしさを生かしてクライアントの期待に応えられれば、メンバーは一層仕事が楽しく感じられるでしょう。一人一人が仕事を楽しむことができれば、自然にチームとしてのアウトプットは高まります。ですから私も適材適所の配置を非常に重視しています。
 加えて、もう一つ意識しているのは、細部まで口を出さず、できるだけメンバーに任せることです。
 全体の方向性についてアドバイスをすることはもちろんありますが、仮説検証のアプローチや具体的な進め方は、各メンバーに任せる。そうしてメンバーが挑戦できるような環境を用意し、後にフォローすることもリーダーの役割だと考えています。
 事前にリーダーがアドバイスをすれば失敗は防げるかもしれませんが、それでもあえてメンバーが自ら考え、挑戦することで得られるものの方が大きいと感じています。あくまで私の持論ではありますが、メンバーの個性を引き出すためにも、リーダーがマイクロマネジメントに陥らないように心がけています。

PwCに再ジョインを決めた理由

──お二人は一度PwCを離れたのち、再入社されたと伺っています。なぜ再入社を決断されたのですか。
藤倉 かつて在籍していた頃から、PwCは人を大切にする温かい組織でした。
 一度離れてからも、知人を通じて最近の様子について話を聞く機会があり、今でもそのカルチャーは変わっていないことを知りました。そこでPwCブランドへの愛着もあり、もう一度働いてみたいと思ったのです。
 またグローバルネットワークとの関係がフラットな点にも惹かれました。外資系コンサルファームの中には、本社の戦略や指示を実行する存在として日本オフィスが設置されるケースもあります。
 ですがPwCは世界各国で運営される独立したメンバーファームの集合体であり、お互いが同等の立場で協力し合っています。
 私は学生時代から「グローバルで活躍したい」という夢を描いていたので、それを実現できる会社はPwCしかないと確信し、再入社を決めました。
──実際にそのチャンスはやってきましたか。
藤倉 転職して1年も経たないうちに、欧州のメンバーファームとプロジェクトで協働する機会がありました。英語のコミュニケーションを通じて一つの案件をやりきったことは、自分にとって大きな経験になりました。
 それ以外の場面でも、海外オフィスのメンバーと交流する機会は思った以上に多いです。PwCのメンバーは周囲との助け合いを大切にしていて、自分一人で解決できないことがあれば、すぐに必要な知見を持つメンバーを探して、情報やアドバイスを求めます。
 私のところにも、一度も会ったことがない欧米やアジアのメンバーから突然連絡が入り、「日本のサプライチェーンについて知りたいからオンライン会議をさせてほしい」などと依頼されることがよくあります。
 同じように私も、困ったことがあると遠慮なくグローバルのメンバーにコンタクトするようになりました。海外の先進的な事例やトレンドをインプットすると、「日本のプロジェクトでもこのような取り組みが必要ではないか」といった新たな視点を得られます。こうしたグローバル規模でチームワークがあるのも、PwCの大きな魅力です。
──大森さんが再入社を決めた理由は何ですか?
大森 私は辞めた後もPwCのメンバーとつながりが強く、縁あって戻ることになりました。
 私も人を大事にする温かさや尖った個性を大切にするカルチャーがPwCの魅力だと感じています。以前在籍していた頃も、私の個性を認め、生かそうとしてくれました。いったん外へ出たことで、それを改めて認識したことが再入社の決め手になりました。
 最初に入社した時は、当時のストラテジーチーム(現在のStrategy&)を経て英国に赴任したのですが、それも会社が私のやりたいことを受け止めてくれたおかげです。
 私が「海外へ行きたい」と言い続けていたら、あるパートナーがそれを聞いて、英国のパートナーと話をつけてくれました。私の思いを理解し、希望するキャリアを実現させてもらえたことに、今でも感謝しています。
──PwCコンサルティングにはどのような学びや成長の機会がありますか。
大森 グローバルでの交流はもちろんですが、同じグループの監査法人や税理士法人と協働する機会もあります。高い専門性を持つプロフェッショナルから自分にない視点や知見を得られることは、大きな学びになります。
 またPwCコンサルティングとしても、あらゆる業種のクライアントに対して幅広いサービスを提供しているので、自分が興味のあることにチャレンジできる機会が必ずあります。
 もし途中で関心のある領域が変わったとしても、PwCの中で社内転職をしながら、自分らしいキャリアを築いていける。好きなことに軸足を置いて、仕事を楽しみながら学び、成長していけるのは、PwCで働くメリットです。
──コンサルティング業界に興味がある読者に向けて、コンサルティング業界でキャリアを形成するためのアドバイスをお願いします。
藤倉 コンサルティングの面白さは、クライアントだけでは解決できない難しいテーマに取り組めること。だからこそ難しさを楽しみ、失敗や困難の中から新たな気づきや知見を学び取っていける人が向いていると思います。
 PwCには個性を伸ばそうとするカルチャーが根付いているので、さまざまなプロジェクトを経験しながら、自分が楽しめる分野や領域を見つけることが可能なはずです。自らの個性を大切にしながらキャリアを伸ばしていきたい人には、最適な環境だと思います。
大森 スタッフから「どんな勉強をすればいいか」「どのようなスキルを身につければいいか」とよく聞かれるのですが、現代のコンサルタントにとって大切なのは「自分は社会にどのような価値を提供したいのか」ということです。
 そして、PwCなら、自分がやりたいことを周囲に発信すれば、それを実現できるプロジェクトやチームにアサインされるチャンスを掴むことができる。「こんな社会を実現したい」という強い思いがある方であれば、PwCはその支援を惜しみません。社会にインパクトを起こせるような新たな挑戦を一緒にできると嬉しく思います。
※役職は公開日時点のものになります。