リュウグウ試料から「多量の水」 海の起源、謎解明の手がかりか
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はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウのサンプルの解析ではたくさんの重要な成果が得られています。地球の海の総量は地球質量の0.02%に過ぎず、地球内部にもあまりないと推定されています。太陽系を作ったガス円盤内は極低圧なので地球軌道付近ではH2O氷の凝縮は難しいので、地球に水がほとんどないことは理解しやすいのですが、そのごく少量の水のおかげで生命は生まれたと考えられており、その少量の水がどこから来たのかということは大問題になっています。小惑星帯から来た小天体の地球への衝突による水の供給はひとつの有力な可能性です。地球に落下した炭素質コンドライト隕石にも水が含まれていますが、地球落下時の加熱、衝突や汚染の影響があるかもしれないので、リュウグウ試料で水が大量に見つかった意義は大きいです(地球の水の起源の決定打にはまだなりませんが)。
水とアミノ酸の検出となると、生命誕生との関わりが気になるところです。少し前に流れたアミノ酸検出のニュースに対してつけたコメントを、ここにも再掲しておきます。
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地球に落ちてきた炭素質隕石の中で、アミノ酸、RNAをつくるリボースや核酸塩基はすでに検出されています。また、単純な有機化合物に放電したり、紫外線やガンマ線をあてると、アミノ酸は比較的容易に生成され、少ないながらもリボースや核酸塩基も生成されることが実験からわかっています。
もちろん、材料さえあれば生命ができるわけではなく、「代謝」のような化学反応サイクルによって局所開放系(エントロピーが増大しないシステム)が成立することも生命誕生には必須だろうと議論されています。しかし、彗星でもアミノ酸の存在が観測され、銀河系に浮かぶガス雲ではアミノ酸の前駆体分子が観測されているので、宇宙空間ではアミノ酸は普遍的に生成されているようで、その生成過程を解明することは大変重要です。
隕石の中のアミノ酸はデータはそこそこありますが、銀河系に浮かぶガス雲で紫外線を浴びたのか、太陽系を作ったガス円盤で紫外線を浴びたのか、隕石母天体内の熱水中で作られたのはわかっておらず、論争になっています。はやぶさ2サンプルの有機物は地球落下という過程を経ていないので、隕石内のアミノ酸のもともとの状態をよく保存しているはずで、詳しいデータの公開が待たれます。