ビジネスウェア3.0を定義する」というミッションを掲げ、さまざまな取り組みを行っている共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」。NewsPicksユーザーの中から、活動内容への関心が高いメンバーが集まって誕生しました。

コミュニティメンバーは、洋服の青山などビジネスウェア専門店を運営する青山商事と一緒に、働き方が激変する時代の中での新しいビジネスウェアのあり方について議論を交わし、商品やサービスを一緒に開発(共創)することを目指しています。

今回は、シン・シゴト服ラボが取り組むプロジェクトの一つ「店舗活用プロジェクト」のプロジェクトメンバーとして活躍していた、Givin’Back株式会社の代表取締役の木下直美さんにインタビュー。なぜシン・シゴト服ラボに携わるのか、シン・シゴト服ラボ編集長の山尾 真実子が聞きました。

社外でしか得られない経験がしたい

山尾:木下さん、いつもプロジェクトではお世話になっています!そもそも、シン・シゴト服ラボにはどのような経緯でご参加されたのでしょうか?
木下:もともとは、起業のための学び直しができると思ったからです。とくに企画から運営までの一部始終を経験することは普段の業務では難しく、良い経験になると思いました。また、コミュニティ活動を通じて、若手の方々と直接関わり、彼ら彼女らの応援ができると思ったのも参加理由の一つです。自分自身、若い頃は苦労をしていて、そこで学んだ経験をこれからの次世代に伝えたい気持ちがありました。
山尾:起業ですか、素晴らしいですね!それが今経営されているGivin’Back(ギビンバック)株式会社なのでしょうか?
木下:そうです。社名に込めた想いとして、私たちが受けた成長機会という “恩” を、様々な人たちに『恩返し & 恩送り(=恩のバトンリレー)』していきたい。そんな想いを込め、社名を「Givin’ Back」にいたしました。
山尾:具体的な事業内容についても教えてください。
木下:簡単に言うと、“売れる成長人材”を育成し、業績拡大に貢献するためのサービス提供を行っていて、現在のところ(2022年5月時点)では3つのサービスを軸に展開しています。それぞれ、法人向け研修プログラムの開発・提供、営業業務改善コンサルティングの提供、その他様々な事業推進サポートの提供です。
とくにお引き合いいただいているのは、法人向け研修プログラムの開発・提供で、その対象は経営者・管理職がメインですが、一般社員の方々や学生さん向けにもサービスを提供しています。
特徴は、独自の「セルフモチベーションプログラム」をベースにしているところで、単にセールストークなど営業に必要なノウハウを提供するのではなく、育成に必要な「モチベーションマネジメント」の手法を研修を通じてマスターしてもらっています。
具体的には、モチベーション向上に必要なWillの形成(弊社では、自分の将来なりたい姿を未来像と言います)を独自のフレームワークを活用しながら、自己分析で強みや価値観を分析ながら、コーチング形式で引き出すことからスタートし、Will(未来像)を形成します。さらに自己決定した、Will(未来像)をもとに具体的な行動計画の立案まで行い、自己分析から描いたWill(未来像)の内容を実業務にまで落とし込んでいきます。
山尾:単なる営業スキルではなく「Will(未来像)の形成」から研修がスタートしているのが面白いですね。
木下:ありがとうございます。私は自分自身の経験から常々、育成がうまくいかない原因は、管理職が2つの手法を知らないことだと仮説立てています。一つ目が「部下の価値観や強みを理解した育成方法」、二つ目が「モチベーションを育てるための働きかけ方」、だからこそ再現性の高いモチベーションマネジメントのやり方を広められれば、業績が伸びる会社はたくさんあると思っています。何より、今の私のように自分自身の成長を心から楽しめる人が、日本にもっと増えるのではとも考えています。

若手が「成長」を楽しめる社会へ

山尾:起業に至るまでにはどんな経緯があったのでしょうか?
木下:実は起業自体は高校生の頃からなんとなく考えていました。家族や親戚が事業を営んでいる人が多く、働くことやお金を稼ぐことに興味を持っていたんです。アルバイトを複数掛け持ちするなど、学生時代から積極的に働いていましたね。とにかく自分の力で稼げる力をつけたくて新卒で不動産業界に入りました。
ただ当時の不動産業界では、まだまだ女性が活躍しづらい環境で「あなたは営業に向いていない」「若い女の子に指示されたくない」と言われることが多かったです。実力ではない部分で、自分を否定的に言われ続けるのが悔しくて悔しくて...。そこからはとにかく自分の市場価値にこだわるようになりました。
まず始めたのは「見た目への投資」で、時計や靴、ビジネスバック、スーツなど、全てを質の高い、高級品にしました。また、話し方など内面的な部分も内省を重ね、資格を取ったり、努力して優秀な売上成績を残したりと目に見える成果をあげ続けました。
ある程度不動産業界で結果を残した後は、無形商材も売れるようになりたいとリクルートに転職。とにかくがむしゃらに働いて社内で表彰されるなど「爆速成長」できたのですが、無理がたたったのか、ある日突然体が動かなくなりました
その日は営業で外回りをしていて帰る途中でした。突然腰に痛みが走って、そこから一歩も動けなくなったんです。半泣きで、理学療法士の資格を持っている知り合いに連絡し応急処置をしてもらってなんとかタクシーで帰宅。後日病院に行くと、過労とストレスが原因だと診断され、そこから一ヶ月、ほぼ寝るだけの生活を余儀なくされました
これまで、お世話になった家族や親族、周りの人たちに恩返しをするための起業という目標を掲げて走り続け、成長の楽しさを感じ、これからと思っていた矢先、突然何もできなくなりました。お世話になった人の顔が浮かび、もう役に立てなくなった気がして、人生終わったとすら思いましたね
なかば自暴自棄になっていたとき、支えてくれたのは家族でした。そこで改めて自分が何のために頑張っていたのか内省しました。同時に、心身が健康であるうちにチャレンジしないと、後悔することになるとも思いました。そこで、「いつかは」と考えていた起業の時期を1年後に設定し、それまでに必要な知識を得る自己投資のフェーズに入ることを決めたのです。
起業の意思と期限を、社内の上司にも伝え、必要なスキルやスタンスのトレーニングを内省しながら繰り返しました。さまざまなプログラムやコミュニティに参加し始め、そのうちの一つがシン・シゴト服ラボでした。
山尾:勉強を重ねた結果、今の事業内容の確立に繋がったのだと思います。なぜ営業部門を持つ企業の管理職の人材開発事業と業務支援を始めたのでしょうか?
木下:最終的に私が実現したいことは、私自身にしかできない「社会貢献」だと思い至ったことが、今の事業内容に大きな影響を与えています。
この2年間、私は自分にしかできない社会貢献とは何なのか、自問自答を繰り返してきました。その結果辿り着いたのが「成長機会を楽しむこと」をより多くの人、とくに、昔の私のような、苦い経験をしている若手の方々に知ってもらうことでした。
そこで試験的に「セルフモチベーションプログラム」を開発し、学生や社会人、企業へ提供したところ、多くの人がモチベーションアップし、成長を楽しめるようになったことから、「これが私にしかできない社会貢献のカタチなのではないか」と気付き、開発したプログラムを軸にした事業を作ろうと決意しました。
そのためには、成長を楽しめず苦しんでいる人の力になることが必要だと思っています。私自身、成長する楽しさを実感している一方で、周りで上司との相性で思うように力を発揮できない人をたくさん見てきました。会社の都合を優先してしまって、部下の成長にコミットできていない管理職の人たちが世の中にはまだまだたくさんいると思っていて、そんな管理層を令和の管理層のあり方に変えることができれば、成長する人の総量は大きくなると思っています。そのためにも、個人ではなく企業(組織)に対して成長環境を整えるためのサポートがしたいと思いました。
まだまだ世の中に「仕事は大変でツラいもの」と思い込んでしまっている人もいると思います。ただ、考えようによっては、仕事は自分を大きく成長させ、アップデートすることができる手段であり、お金を稼ぐことで、よりプライベートを充実させ、人生を豊かにすることができる、とも捉えられます。
成長を楽しめる人が増えれば、社会はもっと変わり、日本はよりよくなるとも思っています。実際にプログラムを実施した人たちは、以前よりモチベーションが倍増し「爆速成長」を続けていて、日本の未来は明るいと感じています。
シン・シゴト服ラボには、志が高く、自分の仕事、成長を楽しんでいる人が多い印象です。私がサポートしたいと思っている若手のコミュニティメンバーも多く、彼らの応援をしながら自分自身も成長を続け、最終的には成長を楽しめる人がたくさんいるコミュニティをいくつもつくって、日本を変えるような大きなインパクトを与えられると良いですね

シン・シゴト服ラボは学びと経験の場でありサードプレイス

山尾:シン・シゴト服ラボに参加いただき、1年ほど経とうとしていますが、木下さんにとってこのコミュニティはどんな場所なのでしょうか?
木下:「学びと経験の場」であり「サードプレイス」でもあると思っています。
店舗活用プロジェクトは、まさに「ゼロ」から「イチ」を生み出す活動で、これまでにはない貴重な学びと経験になりました。新しい社会貢献の形を一緒に作っていく面白さがあり、自分のやりたいことがそのまま形になっていく楽しさもありました。今の仕事を続けながら、社内でできないような経験ができ、スキルアップも叶うというのは、私のテーマでもある爆速成長にもなりました。
もう1つが「サードプレイス」で、仕事好きな人たちと仕事の話もでき、プライベートのことも話せる居心地の良い場所という意味です。友達とは少し違うけれども友達に近い仲間。私が求めていた存在であり、このコミュニティの良いところでもあります。
とくに私の性格に合うなと思うのは、シン・シゴト服ラボのメンバーは本当の意味で互いを「応援」していることです。応援するという言葉には、2つ意味があると思っていて、英語だと「I will support you」と「Good luck」。多くの人は、Good luckなんですよね。でも、シン・シゴト服ラボのコミュニティメンバーはちゃんとI will support youです。成長を共にしていこうというスタンスなので、周囲のことをきちんと考えて動いてくれます。だからこそ私も心から信頼しており、大事な場所になっているんだと思います。
山尾:ありがとうございます。コミュニティ活動を進めるなかで楽しかったことがあれば教えてください。
木下:皆さん忙しいなか、時間を作って参加しているのですが、プロジェクトの目標、進捗、活動内容が可視化されていたのはよかったと思います。仕事でも同様なことが言えますが、可視化することで、成長の実感ができるので私が重要視しているところでもあります。
プロジェクトは洋服の青山併設のコワーキング&シェアオフィス「BeSmart」の2つのブースを、外勤ワーカーが求める形に作り変えるところからはじまったのですが、BeSmartが変わっていく様子を通しても、プロジェクトがきちんと進んでいるという実感、自身の成長にも繋がっているという実感がありました
一方で、もどかしく思うこともありました。関係者が多数いるため調整が難しく、プロジェクトが思うように前に進まなかったのです。スケジュール管理や人を巻き込む力は私の得意な部分でもあり、強みでもあります。今後は、コミュニティをよりよくするため、求めるだけでなく、実現に向けてのガイドライン作成や、中長期の計画からのタスクまでの落とし込みなど、プロジェクト推進の補佐を担えればと思っています。

お世話になった方々への「恩返し」は若手への「恩送り」

山尾:今後の木下さんの展望を教えてください。
木下:私が実現したいことは、若手が自らの可能性を信じ、成長を楽しめる社会をつくることです。そのためにも、より多くの人に、仕事を通じて成長機会を楽しめる世の中にしたいと考えていて、成長欲求を持続できる環境づくりのサポートがしたいと思っています。
ビジョン実現のため、起業という手段を選びましたが、まずは、今展開している事業を拡大し、若手と呼ばれる方々の支援をしっかりと確立していきたいです。その後はかつての私と同じような境遇に立たされている「女性」に目を向け、彼女らの支援を行い、最終的に日本を飛び出しアジアまで事業を拡大させられればと思っています。
アジア進出後は、さらに影響力を付け私の生まれ故郷の台湾をはじめ、「成長機会の平等化」を提供できる事業を育てていきたいです。我々のサービスをより、リッチにすることができれば、若手が成長を楽しめる機会の提供もその分、一気に広げられるため、多くの人の成長機会の原動力となれると考えています。
ありがたいことに、自社のサービスの根底にある手法について、再現性を評価いただき、イギリスのウェールズで実施されるオープンイノベーションの国際学会にて研究成果を発表する機会をもらいました。いただいた数々の素晴らしい機会を活かしつつ、賛同者を増やしながら事業を育て、影響力を大きくしていければと思っています
私が若手のときの経験は、当時からすれば苦しいと感じるものではありました。ただ、家族、周りの先輩、会社、社外のコミュニティなど、周りの環境や人のおかげで自分の成長機会とすることができました。恩を返すために私がして頂いたことと同じように、若手の可能性を広げ、勇気や希望を与えることがしたいです。
恩を返すだけではなく、恩を次の世代に「送る」ことができれば、社会をもっと良くすることができると思いますし、それこそが、私に期待をしてくれた人たちへの最大の恩返しにもなると考えています。
あらゆる業種、業態の企業が総動員で、タッグを組めば、社会変革が起きて、日本がより豊かになる。そうすれば、世界から見た時の日本のプレゼンスも上がる。大きな目標ですが、本気で実現したいと思っていて、その為の手段として、5年以内のアジア進出に向け、全力疾走で「爆速成長」を楽しみたいと思います

ビジネスパーソンの課題解決に一緒に取り組む、コミュニティメンバーを募集

シン・シゴト服ラボでは、今後も「ビジネスウェア3.0を定義する」というミッションに向けて、さまざまなプロジェクトに取り組んで参ります。活動内容は服に留まらず、仕事環境そのものも「装い」と捉え、これからの社会に求められる新しいあり方の探求を続けていきます。
ビジネスウェアについて課題を感じている人はもちろん、日本型の古い慣習に疑問を感じる、仕事のパフォーマンスをもっと向上させたい、などビジネスに関する課題意識をお持ちの方も、ぜひご参加ください。企業や業界の枠を超えた挑戦を、私たちと一緒にはじめてみませんか?
コミュニティについて、さらに詳しく知りたい方はこちらへアクセスください。「#きがえよう就活」プロジェクトの発足の経緯や、コミュニティマネージャーの想いについてはこちら
編集:山尾 真実子(シン・シゴト服ラボ編集長・青山商事)
執筆: 熊井 亜希
共同編集:種石 光(NewsPicks Creations)
カメラマン:西田 優太
デザイン:武田 英志(hooop)