脱炭素分野10年で150兆円投資、政府支援20兆円 環境債発行=岸田首相
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クリーンエネルギー戦略の有識者懇談会という事で、委員の私も出席しました。報道されている政府支援20兆円、GX移行債(仮称、タイトルでは環境債)という話は、懇談会終了間際のプレスが入った場での、岸田首相の発言で初めて聞きました。少なくとも、これまで8回やってきたクリーンエネルギー戦略検討会合で議論して来たものではないです。
まず、4/22の検討会において、2030年に17兆円投資が必要という数字が盛り込まれました。検討会ではその数字に対する委員からの意見や言及は特にありませんでしたが、報道ではそこだけが取り上げられました。
10年で150兆円が必要という数字は5/13の検討会に突然登場しました。こちらも報道ではほぼこの数字だけが取り上げられています。
脱炭素へ年17兆円投資必要 30年時点、経産省試算
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA224DR0S2A420C2000000/
脱炭素実現へ投資「10年間で150兆円必要」…政府が試算公表へ
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220513-OYT1T50014/
私には正直ちょっと唐突感があります。今回息を合わせたように、資料すらない岸田首相の一瞬の発言で見出し記事になっているので、プレスにはレクがあったのだろうと想像します。
さらに、10年で20兆円のGX移行債ということですが、こちらは経団連の提案である年2兆円のGXボンドという提案とほぼ同じです。日商の資料には金額規模の提示のない「環境国債」の文字があります。
グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて
2022年5月17日 一般社団法人 日本経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/policy/2022/043.html
トータル官民で150兆円なので、13%を政府資金と言うイメージ。夏に作られるというGX実行会議、誰がメンバーになるのだろう。EUのグリーンディールが136兆円なので、その辺り意識?
これから用途を議論することになるのでしょうが、スキーム、対象ともに大変悩ましいです。
私とすれば、産業用途のボイラーや商業施設の給湯暖房等の熱需要のヒートポンプ転換や、窓断熱など、地味だが効果の高い所に投資して欲しいです。岸田首相の発言は重い。ただ、どう具体化するかは、結構複雑な状況のように見える。
まず、岸田首相が「GX経済移行債」と言及した発言
http://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/19energy.html
は、「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会という「懇談会」でのもの。「懇談会」という会議形式は、政府の会議の中では、「勉強会」・「研究会」に次いで軽い部類。「審議会」級の会議ではない。だから、この会議で重要度の高い決定や提言は打ち出さず、いわば民間から意見を聞くのが主目的という建付け。
とはいえ、岸田首相の発言は踏み込んでいる。ニュース性は高い。
ところが、「GX経済移行債」は、同会議の経済産業大臣、環境大臣の提出資料には一言も触れられていない。「債」の字も「ボンド」の字もない。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/clean_energy_kondan/dai2/gijisidai.html
あるとすれば、日商の提出資料に「環境国債」と、経団連提出資料に「GXボンド」の言及のみ。経団連提出資料には、「CNに向けたトランジション及びイノベーションに関する技術の開発・社会実装に使途を限定して、GXを実現するために発行する国債」と定義されている。「国債」を想定している。
日本の財政制度で「環境債」に類する国債を出すとすれば、それは財政投融資の仕組みを活用することになろう。きちんと使途を限定しなければならないから、財政投融資対象機関への融資案件を事前に限定する形で起債すればよい。加えて、GXにおける果実をその返済原資に充てられて、将来の増税が避けられる。
ただ、それを実現するなら、場合によっては、財政法なり特別会計法なり法改正が必要になるかもしれない。その場合、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会でも審議が必要になるかもしれない。経済産業省と環境省だけでの議論では済まないこともありうる。GX移行債について取り上げていないメディアもありましたが、ピッカー大場さんのコメントを拝読して経緯がわかりました。要するに生煮えのアイデアでしょうが、トランジション(移行)に重きを置くとしてもグリーンをうたうからにはEUのように定義付けをしっかりする必要があるのかな、と