2022/5/17

【解説】食糧危機解決のカギを握る「中国の養殖業」の実情

POINT
  • 今世紀末までに地球の人口が30億も増加すると予想されるなか、食料安全保障の次に議論すべきは「栄養安全保障」だと専門家は指摘する。
  • 栄養安全保障の観点からもますます注目されるのが、家畜より環境負荷の少ない「ブルーフード(水産物)」。とりわけ「養殖」の重要性が増しており、食用消費のために養殖される水産物の量は、いまや天然の漁獲量を上回っている。
INDEX
  • 食料安全保障の「切り札」
  • 炭素排出量は「牛肉の10分の1」
  • 世界的な「栄養不足」への懸念
  • 世界の養殖の「中心」を担う中国
  • コロナ禍で成長にダメージ
  • 気候変動が養殖業に与える影響

食料安全保障の「切り札」

世界の人口が増えるほど、栄養価の高い食料の必要性が高まる。そこで問題になるのが、今世紀末までにさらに数十億人が増えると予測される人口をどうやって食べさせていくかだ。
希望の光は「養殖」にあると専門家はみている。水産物の養殖は、食料システムの改善と気候変動との闘いにおいて、これまで以上に重要な役割を果たすことになるだろう。
とりわけ世界の養殖生産量の60%以上を占める中国にとって、その重要性は高まっている。中国の飽くなき食料需要、食料安全保障への執念、海洋経済の積極的な拡大を考えても、養殖産業の役割はいや増すばかりだ。
カキや淡水魚、エビをはじめとする中国の養殖産業は、着実に成長を続けてきたものの、近年、新型コロナの流行や環境保護規制の影響で生産ペースが鈍化している。
持続可能な養殖は、食料安全保障や人々の健康維持のために不可欠なファクターであり、研究者たちは現在、生産量を増やす方法を模索している。
遼寧省大連でのカキの養殖風景(Liu Debin/VCG via Getty Images)