東証でCO2排出取引=9月から実証実験、経産省委託
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わが国では、排出量取引が、東京都と埼玉県で行われているが、文字通り「相対取引」で行われている。つまり、買いたい主体が売り手を探し出して取引する(さすがにここはデジタルで行われるが)。不特定多数の主体が売買する市場取引ではない。
もちろん、この実証実験では、排出量の売買に参加するのは特定の企業だけなので、不特定多数の主体の間の取引とはならないだろう。しかし、買い手と売り手をマッチングしたり、価格発見機能が働いたりするという市場取引ならではの機能がきちんと働くように進められることを願う。そして、排出量取引が取引所ビジネスとしてもうまく成り立てば、脱炭素化という本来の目的だけでなく、取引所ビジネスによる価値創造により経済成長にも資する。
特に、アジアの排出量取引の中心が日本の市場となれば、円建てで排出量取引が行えるというアドバンテージも享受できる。既に、上海に排出量取引市場が新設されているだけに、日本での取組みが遅れれば、取引所ビジネスの付加価値は上海に奪われる。これは一種のカーボンクレジット取引のことかなと想像していますが、集約的マーケットの最も難しい課題の一つが、取引される品を均質的にすること。
穀物ならどの小麦1トンも同じですが、CO2削減量1トンの価値のばらつき(例: 森林拡大は排出削減よりも人気がある)や信憑性のばらつき(例: ちゃんとした認証を得ているのか)により、コモディティ化にはひと手間が必要です。また、信頼性の高い機関による認証を得ているモノに限定すると、取引対象にできるモノが僅少になり、流動性の高いマーケットがそもそも実現できない、という別の問題があります。
一方で、この種の取引の良さは、(一部の規制に基づくカーボンクレジット取引を除いて)世界中どこのマーケットでも売買が可能であること。例えば南アメリカで実現したCO2排出削減量を、韓国で認証を得て韓国のカーボンクレジットマーケットで売る、ということが可能です。
裏を返せば、モノとしてはWild Westですが、取引所間の国際競争に直結しています。