2022/5/6

【解説】「中絶の権利」が否定されたらアメリカはどうなる?

INDEX
  • 最高裁文書リークの衝撃
  • 合法中絶件数が13%減の見通し
  • 出産可能な女性の4割に影響
  • 注視される6月の最高裁判決
  • 悲鳴を上げる女性支援団体
  • 「別世界」はすでに到来している

最高裁文書リークの衝撃

アメリカで半世紀にわたり「女性が人工中絶を選ぶ権利は合衆国憲法で保障されている」という根拠とされてきたのが、過去の連邦最高裁判例「ロー対ウェイド判決」(1973年)だ。
しかし今週、同判決を覆す見通しを示した最高裁文書が漏洩(ろうえい)し、全米に衝撃を与えている。
もし、最高裁が本当に「ロー対ウェイド判決」を覆すことを決定すれば、アメリカは別時代に移行することになるだろう。中西部と南部の広範囲で、人工妊娠中絶は合法ではなくなるからだ。
22の州では、ほぼ間違いなく中絶を禁止するか、あるいは合法的な中絶の範囲を大幅に制限する方向に動くだろう。
「ロー対ウェイド判決」が覆ることのインパクトは、人によって大きく異なる。
民主党州に住む女性や、他州のクリニックに通う余裕のある女性にとっては、それほど変化はないかもしれない。しかし、共和党の多くの州に住む貧しい女性にとって、中絶のために他州のクリニックへと足を運ぶことは、とてつもなく困難なことだ。
中絶の権利を訴えてデモを行う人々(Shuran Huang/The New York Times)