コロナ感染による肺炎で、認知症の発症リスクが上昇
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この研究からコロナ肺炎と認知症発症リスクの関連を結論づけて良いのかは、明らかでない点も多いと感じます。だからこそ、CIDと呼ばれる上位の医学雑誌に掲載とはならず、OFIDと呼ばれる下位の雑誌への掲載が決まったのではないかとも深読みします。
数字を素直に受けとると、コロナによる肺炎と一般の肺炎で0.5%の差がついた、すなわち1000人中5人の差がついたということになるのですが、この研究では一部の持病の差は調整されているものの、例えば背景の教育レベルなど比較的クリティカルと思われる要素について調整を十分できていません。
新型コロナのパンデミックでは、ワクチン未接種の層が圧倒的に多く肺炎を発症してきたため、その層に偏りがある可能性が高いと思います。
あるいは、新型コロナの「後遺症」としてよく見られている抑うつ症状や集中力の低下が長期に認知機能に影響を及ぼしている可能性が否定できず、「認知症」の過剰診断につながっている可能性も懸念します。これはまさに、現場で私たちが頭を悩ましている点でもあるからです。
これらの点から、本研究から新型コロナ肺炎と認知症の関連を結論づけられるかには疑問が残ります。まだ引き続き研究の蓄積が望まれる領域であると考えます。
(にもかかわらず、雑誌記事のタイトルでは割り切って言い切られてしまうことも多いのですが、そんなに物事はシンプルではないのです。)
引用文献:https://academic.oup.com/ofid/article/9/4/ofac115/6543929
注目のコメント
新型コロナウイルスに感染症が蔓延しはじめた初期の頃から、腎臓系、心血管系に重いダメージを与えるケースがあることは報道されていました。その後特徴的なものとして、味覚異常が高頻度に起こることもわかっていました。この時点で、このウイルスに感染し重症化した場合には、人体の各所において、血管内皮細胞および神経細胞を損傷させるリスクが他の感染症と比べて高いことが想定されました。
記事にあるように、認知症の発症率(絶対的発症率)はかなり低いのですが、調査した症例数が多いことから、対照群(他の肺炎患者)との有意差は見られていると思われまます。
今回の報道は、その意味で従来の範囲内のものと思えます。それでも認知症の場合厄介なのは遅れて現れるという点、有効な医薬品がない点、また介護などにかかる社会的負担が大きい点です。
アルツハイマー型認知症の場合認知症の進行は10~20年程度とゆっくり進みます。今回の新型コロナウイルス感染症由来の認知症が証明された場合、それほどの期間は必要ないと思いますが、それでも顕著に症状が現れるには数年が必要だと思います。
このような事情があるため、新型コロナウイルスに感染して肺炎レベル以上の症状が出た方は不安だと思いますが、注意して見守る以外に対処のしようがありません。そうなる前に新型コロナウイルスに罹患しても重症化させない対策としてワクチン等で防御することが優先されます。
記事タイトルにある「コロナ感染による肺炎で」というのはミスリードです。肺炎が認知症を発症させるわけではなく、「肺炎が発症するほど重症化している場合は肺以外の臓器にも細胞レベルでダメージを与える危険性のあるウイルス」という意味になると思います。アルファとオミクロンとでは全く違う症状なのに、Covid-19でひとくくりにするのは乱暴ではないか。
Covid-19で入院した老人にケアはあったのか。ウイルスの脅威以上に周りが特別な反応をしたら、気がめいると思うのだが、その影響は差し引いたのか。
せっかく感染症医が脚光を浴びるチャンスだったのにどうでもいい研究しかしないなら再び資金を引き上げるしかない。