2022/5/3

【解説】万能マイクロソフトは「テックの次」も強い

NewsPicks NY支局長
巨人マイクロソフトがひたすら強い。
ちょうど先週発表された1〜3月期の決算は、ハイブリッド勤務を追い風にクラウドの「アジュール」が大きな伸びを持続し、売上高は6.5兆円に。他のビッグテックが伸び悩み始める中で、その成長はとどまることを知らない。
10年前の不振はどこへやら、時価総額も、アップルに次ぐ世界2位で、残る3社を大きく引き離している。
だが、しかしである。
世界のデジタル化を手堅く押さえてきたこの会社だが、この2年間で、次の10年で勃興する「気候テック」のイノベーションに最も先鞭をつけている大企業である、ことはあまり知られていない。
「2030年までにカーボンネガティブを実現し、2050年までには、1975年の創業から排出してきたCO2をすべて取り除く」
これは2020年1月にマイクロソフトがぶち上げた気候目標だ。
多くの企業が2050年までのカーボンニュートラルを宣言するなか、マイクロソフトの場合は2050年までに創業75年分の排出を相殺させる、という聞いたことのないレベルの約束になっている。
もはや、何がすごいのかもよく分からないかもしれないが、まず理解すべきは、これは単なる環境宣言にとどまらない、ということだ。
むしろ肝要は、そのプロセスにこそある。
毎年発表されるマイクロソフトの目標の進捗を細かく精査していくと、彼らが、とてつもなく厳しい目標を自らに課し、実践することで、実はこの10〜20年で台頭してくる次のテクノロジーでも見事に覇権のポジションを確立していることが分かるのだ。
「これは、マイクロソフトによるムーンショット(月面着陸)だ」
NewsPicks編集部では、そう話すマイクロソフトの幹部への取材を通し、その野望の行き先をイチから解説していく。
INDEX
  • ①他社の「2年先」を行く
  • ②市場を「ゼロ」から作ればいい
  • ③SaaSにして提供してしまえ

①他社の「2年先」を行く

まず、マイクロソフトの目標は「2つ」の点で図抜けている。