2022/4/26

【深刻】欧州の再エネテックに「カネ」が集まらない理由

INDEX
  • 気鋭のスタートアップを阻む「壁」
  • 資金さえあれば問題解決できる
  • 再エネへの投資は暗号通貨の3分の1
  • 敬遠される大規模プロジェクト
  • いまの拡大ペースでは間に合わない

気鋭のスタートアップを阻む「壁」

ヤコブ・ビトナーは7歳のとき、家族と一緒にロシアからドイツに移住した。
それから28年がたったいま、ビトナーはロシア産エネルギー(に限らず、あらゆる輸入燃料)に対するドイツの依存を解消するため、再生可能エネルギーをめぐる厄介な問題の解決に取り組んでいる。
風がなくても、太陽が照らなくても、風力エネルギーや太陽エネルギーを常時利用できるようにするには、どうすればいいのか?
ビトナーは2016年、ミュンヘンを拠点とする企業「ヴォルトストーリジ(VoltStorage)」を創業。欧州圏の住宅所有者向けに、太陽光発電用蓄電池を販売するビジネスで、そこそこの成功を収めた。
同社はいま、はるかに大規模なバッテリーを開発中だ。
ひとつ当たりのサイズは輸送コンテナほど。現在主流のバッテリー技術と違い、数時間だけでなく数日にわたって電力貯蔵・放電ができる化学プロセスを基盤としている。
再生可能エネルギーとは、本質的に不安定なものだ。その弱点を克服しようというビトナーの野望は、化石燃料への依存から脱しようとするヨーロッパ全体の目標とも完璧に合致する。
とはいえ、ビトナーの会社はもどかしい現実に直面している。プロジェクト資金の不足だ
再エネスタートアップ「ヴォルトストーリジ」を創業したヤコブ・ビトナー(Lena Mucha/The New York Times)