円安はスピード違反? なぜ大台目前に切り返し【経済コラム】
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1ヶ月で10円単位で相場が動くのは80年代以降珍しいことではない。今回のように明らかな円安要因がある時には、若干の揺り戻しを繰り返しながらも中期的には一方向に向かうものだ。
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米国のインフレ率が8.5%に高まって日本はまだ0.5%という状態ですから、円には、常に円高方向への圧力が働きます。1ドル100円のとき、同じハンバーガーがアメリカで1ドル、日本で100円なら、1ドル札でも100円玉でも1個買うことが可能です。ところがアメリカのハンバーガーがインフレで2ドルに値上がりし、日本で100円のままなら、100円玉で日本のハンバーガーは1個買えますが、アメリカでは半分しか買えません。100円玉でアメリカのハンバーガーも日本のハンバーガーも1個買えるよう、1ドル50円の円高になるのが道理です。
通貨はまた、通貨の強さは国の強さという側面も持っています。それぞれの国の経済的な強さと通貨への信頼が通貨の価値を支えているのです。異次元の金融緩和は金融政策であって為替政策でないと日銀は主張していますが、モノとサービスの価値の裏付けのない円を大量に発行すれば増え過ぎた円の価値が下がって円安になるのは必定ですから、円安政策であることは確かです。現に、安倍元総理の就任でこうした政策が打ち出されることがはっきりして以来、ドル円相場は紆余曲折を伴いながらも80円前後から足元の120円台後半まで一貫して円安に動いています。
それでも急激な円安に向わないのは、経常収支、つまり政府と民間を合わせた日本全体の外国との取引が黒字で日本には生産余力があり、過去の黒字で蓄えた350兆円の対外債権もあり、日本経済がそれなりの信用を今なお保っているからです。
そういう意味で、円を巡って円高に向かう要因と円安に向かう要因が交錯しています。いま起きている現象は、政府が財政赤字を膨らませ、日銀が主要国の政策変更をよそに“円安政策”を継続し、円を下支えして来た経常収支の黒字が資源価格の高騰で赤字に転じかねない円安への圧力と、彼我のインフレ率の差から来る円高への圧力のせめぎ合い。原油価格がピークから3割ほども下げ、経常収支がどちらに向かうか分かりません。もともと財政再建意欲を持つはずの総理は日銀の審議員にリフレ派を任命することを避け、政治とメディアがインフレ警戒の声を上げ始めました。
円の評価(実質実効為替レート)は既に過去70年来の異常な円安水準です。円安方向に懸ける勢力も確信が持ちきれず、微妙な動きになるのは分かるような気がします。短期で見ると、価格は予測できない良い例ですね。。
長期で見ると、円安が進むのは間違いないと思っています。
・日銀の指値オペを中心とした金融緩和政策
・欧米の金融引き締め政策
この2つの相反した政策が円をドルやユーロに変える動きを生んでいます。