大麻成分薬、日本初治験へ 難治性てんかん用、取締法改正も
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「エピディオレックス」はカンナビジオールという大麻に含まれる成分を含有する医薬品で、米国では、他の薬ではコントロールするのが困難なてんかん性脳症である「レノックス・ガストー症候群」および「ドラベ症候群」と名付けられている希少かつ重度疾患に対し、米FDAにより承認されています。両疾患とも患者数はそれぞれ数千人程度と見込まれます。
他のより一般的なてんかんに有効か否かを結論づけるための研究は十分に行われていません。今回日本で使用が検討されるのは、一般的なてんかんを除くものです。
日本の現行法では、大麻取締法により、大麻から製造した医薬品の施用などが禁じられています。また、免許制の「大麻研究者」を除き、大麻を輸入することも禁じられています。そのため、「エピディオレックス」の個人輸入もできません。臨床試験を行うにも、先立って法律を変えないと同様に大麻取締法に抵触するため、臨床試験を行うための大麻取締法の改正も伴って検討されています。
なお、米国での医療用においては、カンナビジオール と共に大麻の主な有効成分であるテトラヒドロカンナビノール（THC）を化学的に合成した合成THC製剤「ドロナビノール」について、がん患者の化学療法に伴う副作用緩和のための臨床試験で好成績だったため、FDAから認可を受けています。
他に米国では、大麻（マリファナ）の医療用使用も特例的に認められている場合があります。HIV患者が習慣的に使うことが多いマリファナ使用中はHIV罹患時の痛みが和らぐことが知られていることと、米国では「ドロナビノール」が高価だからという理由から、やむを得ず認めているというものです。
日本で「ドロナビノール」や大麻（マリファナ）が将来医療用に認められる可能性はゼロではありませんが、医療への公的保険のカバー範囲が広く厚く、他に鎮痛用麻薬（モルヒネ）が臨床で使用できる環境にある以上、その可能性は低いと思います。今回の検討の範囲に、大麻（マリファナ）の一般への解禁は含まれていません。医療大麻というと、大麻草を所持使用することと勘違いされますが、違います。
今回は大麻成分（カンナビノイド）の成分を製剤化したものとなります。
CBD製剤、エピディオレックス（GWファーマ）の治験は公明党秋野議員と、聖マリ、沖縄赤十字病院で以前治験の準備をしていましたが、治験は大麻取締法に該当していたとしても可能としていました。しかし、「大麻取扱免許かつ医師免許」という条件に苦しんで前に進めずにいました。
そんな中、昨年「大麻に関する検討会」という有識者会議が行われ、来年の大麻取締法改正に向けて動いているさなか、今回の治験承認となりました。
ちなみにCBD製剤はもちろん茎種ではなく花などから抽出されていますが、治験は法の適用外ということで特例で認められています。
大麻取締法改正ではCBD製剤だけでなく、THC製剤も、モルヒネ・コンサータなどと同様の管理の下、認めていく方針の可能性が有識者会議で示唆されました。
FDAでも難治性てんかん（ドラべ症候群、ガストー症候群）の薬として承認されているため、おそらく同様の適用疾患で進めるものと思われます。
来年の大麻取締法改正に向けて、様々目まぐるしく変わっており、大きな歴史の転換点となっています。昨年1月〜6月まで8回にわたって、厚労省の『大麻等の薬物対策のあり方検討会』で議論されており、その報告書をもとに進められてきました。今回治験が実施されるのは英GW Pharmaceuticalsの難治性てんかん治療薬「Epidiolex（エピディオレックス）」。Epidiolexは2018年に米FDAが大麻由来の医薬品で初めて承認した薬でブロックバスターとして非常に期待されています。
それを受けて2021年2月にアイルランドのJazz PharmaceuticalsがGW Pharmaceuticalsを同年のバイオM&A最大となる72億ドルで買収しました。そして、Jazzが期待していたように昨年Epidiolex単体での売上高は4.6億ドルだったため、さらにJazzはEpidiolexに1億ドル以上を投資して2024年に新たな工場が稼働する予定です。
厚労省『大麻等の薬物対策のあり方検討会』
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html
Jazz PhamaceuticalsによるGW Pharmaceuticals買収時のプレスリリース
https://investor.jazzpharma.com/news-releases/news-release-details/jazz-pharmaceuticals-acquire-gw-pharmaceuticals-plc-creating
昨年4月にGW Pharmaceuticalsは日本展開に向けて東京本社を開設しています
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000077559.html
