2022/5/9

情報共有のために「定例会議」を増やす。それは正しい解決策か

NewsPicks Brand Design Senior Editor
テレワークが浸透し、どこでも働ける環境が整った。しかし、社内のコミュニケーション量の低下に、頭を悩ませる経営者やマネージャーは少なくない。連日の日報や週報の記入、過剰な「ホウレンソウ」の徹底、情報共有のためだけの社内会議……。決め事が増え続け、ビジネスのスピードが落ちてはいないだろうか。

働き方が多様になった今、チーム全体の生産性を上げ、結果を出すための秘訣は──。

2017年の創業以来、805社、のべ17万3000人の働き方改革を支援してきたクロスリバー代表取締役CEOの越川慎司氏を迎え、LumAppsマーケティングマネージャの松下真子氏と語り合った。

「過剰な気遣い」が生産性を落とす

──単刀直入にうかがいます。テレワークで本当に生産性は向上しているのでしょうか。
越川 そうとは言い切れないですね。
 確かにテレワークによるプラスの変化はありました。「仕事=出社」という考え方がなくなり、その場にいることで評価されるのではなく、真に価値を生み出すために何をすべきかという思考に変わってきています。
 しかし、マイナスの影響も見逃せません。
 どんな環境下でも、どんどん成果を出せる人がいる一方で、チームワークがうまくいかずに悩む人、困りごとを相談できない人がいます。
 つまり、組織内の「分断と孤立」が深まっているのです。
 しかも、我々が17万人を対象に行った匿名のアンケート調査では、労働時間がコロナ前である2019年と比較して約14%増えています。管理職はさらに多く、約17%増です。
 どうせ旅行にも行けないならと、この2年間、長期休暇を取っていない方もいます。有休取得率がコロナ前の半分に下がっている調査結果もあるのです。
松下 驚きのデータですね。働き方改革が叫ばれているにもかかわらず、労働時間が増えてしまっているのはなぜなのでしょうか。
越川 理由のひとつは「過剰な気遣い」です。
 2020年6月にパワハラ防止法が施行されたのをきっかけに、管理職の方々は部下とのコミュニケーションのあり方を非常に気にするようになりました。
 仕事を頼みたくても、下手な言い方をしたり雑に押し付けたりすると「パワハラ」認定されるかもしれない。
 そうなると声をかけるのが億劫になり、自分で片付けたほうが早いと仕事を抱えてしまう。
 メンバーの顔や状況が見えにくいテレワークになると、なおさらです。
 もちろん、これは管理職に限った話ではありません。
 適切な情報共有がされておらず、リアルタイムで稼働が見えにくいため、引き継ぎしようにも手間がかかる。
 協力すればすぐ終わる作業であっても、ひとりで考え込んでしまう。
「分断と孤立」が労働時間を延ばしているのです。
 その結果、売上が上がっていればまだいいですが、そうではないのが大きな問題です。

ますます増える“ムダ”な「社内会議」

──社内の「分断と孤立」を防ごうと、定期的なオンライン会議や、朝会・夕会など情報共有の時間を設ける企業も多いように思います。
越川 ええ。ここにも恐ろしいアンケート結果があるんです。
「1週間、あなたは『何に』業務時間を費やしていますか?」
 ぜひ、みなさんもカレンダーを見返してみてください。
 17万人に聞いたところ、「社内会議」がダントツ1位の45%とわかりました。コロナ禍になり、2019年の調査から割合が2%増えています。
 より詳しく調べてみると、会議のための事前会議や、社内会議のための「資料作成」にも多くの時間が取られている。
 社内会議のための、資料作成のための、事前の社内会議なんてこともあるわけです(笑)。
 これで生産性が上がるわけがありません。
 会議の目的は、3種類に分類できます。①情報共有、②意思決定、③アイデア出し。
 まず、①情報共有だけの会議はなくしましょう。情報はデジタルツールで十分共有できます。
 次に、②意思決定と③アイデア出しの会議は、必ず分けて行うこと。
 ここを明確に分けるだけで社内会議が15%減ることが調査から明らかになっています。
 最悪なのは、意思決定とアイデア出しを同時にする会議です。この2つを混合して、いい結論が出た試しはありません。
 アイデア出しの本質は「量」。心理的安全性の高い場で、とにかくたくさんのアイデアを出すことが肝心です。
 たとえば、私たちが支援した事業開発19件のうち、会議室で出たアイデアはたったの2件。17件は、会議後の雑談がアイデアの元になっています。
 結局のところ、アイデア出しに必要なのは会議ではなく、「カジュアルなコミュニケーション」なのです。

「ほしい資料が見つからない」はツールで解決

松下 すごく納得感があります。
 私たちLumApps(ルムアップス)は、「社内コミュニケーションを持続的なリレーションシップへ」をビジョンに掲げるフランス・リヨン発の企業です。
 たとえば、社内の適切な情報共有やナレッジの蓄積において我々のプラットフォームがお役に立てると思います。
 従業員エクスペリエンスプラットフォーム「LumApps」は、業務に使うあらゆるツールの「ハブ」となり、すべてのコンテンツやアプリ、情報へのアクセスを1か所で完結するサービスです。
 たとえば、業務中のよくある困りごとが「過去の提案資料を参考にしたいのだけど、どこにあるのかわからない」「関連情報がバラバラの場所に保存されていて、探すのに手間がかかる」といったもの。
 記憶を頼りに、Googleのドキュメントを検索したり、MicrosoftのSharePointを検索したり、Slack内を検索してみたり……と、さまざまなビジネスアプリの検索窓から探してみたものの、イマイチほしい情報にたどり着けない。
 そんな悩みは、LumAppsで解決できます。
 グループウェアGoogle Workspaceのドライブをはじめ、Microsoft 365のSharePoint、 コンテンツ管理ソリューションのBoxなど、連携しているすべてのストレージの社内情報をLumAppsから「横断検索」できるのが特徴です。
越川 社内情報の検索窓がひとつですむ。それはいいですね。
 実は先ほど紹介した労働時間のデータで、コロナ以降、もうひとつ特徴的な変化がありました。
 それは、「社内資料検索」に7%もの時間が奪われているということ。これほど非生産的な時間はありません。

自社に最適なプラットフォーム構築を叶える

松下 業務をスムーズに生産性高く進めるためのツールは各社から優れたものが提供されており、お客様は業態や部署に合わせて最適なものを選び組み合わせてビジネスを進められています。
 LumAppsは、それらすべてを集約し、ビジネスの入り口となる“バーチャルオフィス”のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。
 社内のお知らせや社員情報、過去の資料など、業務に必要な情報に、すべてここからアクセスできるとイメージしてください。
 サイト作成や記事の投稿は簡単で、IT知識がなくてもドラッグ&ドロップでUIをデザインできるようになっています。
 また、連携しているグループウェアのIDやグループを活用し、ハイライト表示させる情報を管理者側で社員一人ひとりにパーソナライズできます。従業員にとっては、自分に必要な情報だけが目に飛び込んでくるわかりやすい画面になりますね。
 たとえば、日本航空さんでは、LumAppsと航空機の運航情報を示すツールをAPI連携させ、トップ画面に表示しているとうかがっています。
 ほかにも、必ず見てほしい投稿に「必読ボタン」をつけたり、重要なお知らせを見ていない人だけにリマインドしたり。
「アナリティクス」機能もあり、全従業員の使用状況を見て、見てもらいやすい投稿の傾向を探り改善に活かすこともできるんです。
越川 私自身、過去にマイクロソフト社に勤めていたのでわかるのですが、たとえて言うならGoogleやMicrosoftは全世界統一の「真四角」なサービスなんですね。
 でも、お客様の要望はそれぞれ異なっており、本当にほしいサービスは長方形だったり、楕円形だったりする。
 LumAppsは検索性やカスタマイズ性の高さなどを強みに、その差分を解消していくプラットフォームなんだと感じました。

「共感と共創」で最高の仕事を

──越川さんならLumAppsをどのように使いたいですか。
越川 テレワークによって生まれた「分断と孤立」を「共感と共創」に転換するために使いたいですね。
 そのためにまずすべきことは、今抱えている「痛み」を取ること。つまり、不便や不満、不安、不快の解消です。
 これはLumAppsの検索性の高さや、ひとつの画面で情報収集や情報共有、「感情共有」ができる特性によって解決できるだろうと思いました。
 たとえば、テレワークで大きく減ったのが「雑談」です。
 私たちが支援している企業には、社内会議の冒頭2分間は雑談のために使うことを勧めているのですが、その結果、会議の発言数は1.7倍になり、予定より早く会議が終わる割合が45%も上がっているんです。
 なぜかというと、カジュアルなコミュニケーションによってチームの心理的安全性が高まるから。
 心理的安全性の高い環境では、「今、ちょっといいですか?」といった声がけも進み、社内のコラボレーションも活況になります。
 雑談によって、資料作成の時間が減ったデータもあるんですよ。
 つまり、生産性向上のためには情報だけでなく、「感情共有」も同じぐらい大事なのです。
 LumAppsは、SNSのような使い方もできるそうですね。
松下 アップされた投稿やデータに、「いいね」やコメントができる機能を備えています。
 また、コミュニティ機能で“雑談部屋”のような交流の場をつくることもできます。
 たとえば、コロナ禍が始まった頃、当社のLumAppsのトップページに「コーヒーブレイク」というボタンが出現しました。
 押してみると、Google meetに接続され、本社のあるリヨンやパリ、オースティン、ロンドンなど、各国のLumApps社員が、自宅からちょっとした休憩の時間に集っていた。
 雑談しながら、すごく心がホッとしたのを覚えています。
越川 そういった時間は大切ですよね。
 我々の調査によると、日本の多くのビジネスパーソンは「承認」を働きがいの上位に挙げています。
 社内の士気を高めるためにも、テレワークではより「感情共有」を意識してほしいですね。
 同僚だけでなく、社長や上司の投稿にもどんどん「いいね」や「笑顔」のマークを使ってみる。オンライン会議でいい意見が出たら、「88888(拍手)」とコメントして相手を称える。
 そんな簡単なことからでいいんです。まず、やってみること。
 これまで多くの経営者が「テレワークなんてできっこない」と言っていましたが、行動してみたらできた。そうして働き方に対する意識も変わっていった。
 よく意識を変えようと言いますが、必要なのはまず先に行動を変えることです。
 出社時でもテレワークでも、気軽に話しかけていい雰囲気が生まれれば心理的安全性が高まり、過剰な気遣いが減り、生産性も向上していきます。
松下 まだまだテレワークやハイブリッドワーク下にあり、フィジカルには孤立している状態が続いています。
 LumAppsは、オンライン上でカジュアルなコミュニケーションがすぐできるプラットフォームです。
 また、パソコンだけでなくマルチデバイスに対応しているので、移動中でもテレワーク中でもオフィスにいるときでも、スマートフォンを開ければ仲間や必要な情報に出会えます。
 そんな従業員エクスペリエンスの向上が、所属意識やモチベーションを高めることにもつながっていくと思います。
 場所や言語に関係なく、すべての従業員が最高の仕事をできるように。LumAppsを通して、そんな世界を作り上げていきたいと考えています。