2022/6/20

【アラムナイ対談】BCGで学んだ、プロフェッショナルの「思考法」

NewsPicks, Inc. Brand Design Editor
成長志向が強い若手ビジネスパーソンを中心に、人気を集めるコンサルタント職。「経営を学べる」「どの業界にも通用するビジネススキルが身につく」などの理由で、コンサルティングファームに興味を抱く人は少なくない。
では実際のところ、コンサルタント職を経験することでどのような成長や学びが得られるのか。その答えを探るため、ともにBCG出身者であるラクスル株式会社COOの福島広造氏と、NPO法人クロスフィールズの共同創業者である松島由佳氏の対談を実施した。
印刷や広告、物流など20世紀型の既存産業をテクノロジーの力で進化させ、業界構造の変革に挑むラクスル。産業の変革と事業成長を実現するため、同社の事業ポートフォリオマネジメントを担うのがCOOの福島氏だ。
一方、松島氏が2011年に起業したクロスフィールズは、企業の社員を新興国やNPO、ソーシャルベンチャー等に派遣し、社会課題解決に取り組む「留職」プログラムやフィールドスタディなどを提供している。これまでに50社以上から2000人を超えるビジネスパーソンが参画し、貧困や教育などさまざまな社会課題の解決に挑んできた。
(写真提供:NPO法人クロスフィールズ)
アラムナイである二人に、コンサルタントの醍醐味やBCGで学んだ思考法や仕事術を聞いた。
INDEX
  • 「山登り型」と「川下り型」のキャリア
  • 決め手は「実行」への強いこだわり
  • BCGで学んだ「思考法」
  • キャリアの「軸」が見つかる場所

「山登り型」と「川下り型」のキャリア

──福島さんはITコンサルティングファームからBCGを経てスタートアップのCOOに就任。松島さんは新卒でBCGに入社し、その後NPOを共同創業しました。お二人がキャリアを形成するうえで大切にされてきたこととは何でしょうか。
福島 私のキャリアのテーマは「変化点を作る」です。
 その原点は、中学時代に歴史年表を見て「時間はフェアじゃない」と感じたこと。どの時代も同じ時間が流れているはずなのに、変化の少ない江戸時代は短く省略され、非連続な変化が起きた戦国時代は長くたくさんのことが語られる。
 つまり歴史に残るのは「変化点」となる出来事だけ。それで卒業文集に「変化点になりたい」と書いたことが、いまに至るまで私の軸になっています。
──その考え方はキャリア選択にどう影響しましたか。
福島 私は新卒でITコンサルティングファームに就職しましたが、それは「テクノロジーが世の中の変化点になる」と確信したからです。
 ただ実際は、私の経験ではテクノロジーの力だけで変えられることは少なかった。事業や組織が変化するためには、優れたシステムやテクノロジーに加え、戦略が必要なのだと思い知ったのです。
 そこでインパクトのある変化点を作り出すため、戦略を強みとするコンサルティングファームであるBCGに転職しました。
 そして現在は、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げるラクスルのCOOとして、企業経営を実践しながら変化点を生み出すためにチャレンジしています。
──松島さんはいかがですか。
松島 私がキャリア形成で意識したのは「山登り型」と「川下り型」という考え方です。
 私の場合は、最初から目指す山を決めて一直線に登り続ける「山登り型」ではなく、目指す方向はありながらも、川を下りながら、気になる支流があったら入り込んでみたり、面白そうなチャンスがあったら飛び乗ってみたりする「川下り型」の考え方を大切にしてきました。
 チャンスの波が来たら乗ってみて、柔軟に方向を変えながら、最終的に目指す海に向かっていくことを大事にする、そんなイメージです。
 これは子育てなどでキャリアの一時休止を余儀なくされたとしても、柔軟にキャリアを形成していくためにはどうすればいいかと新卒の就活時から考えていたことが影響していると思います。
 ただ方向は変えつつも、自分の中で大切なものは一貫しています。それは「企業とNPOの掛け算で社会課題を解決したい」という思いです。
 私の原体験は、中学生の頃にNPOの活動に触れたこと。社会を良くするために取り組む人たちの姿を見て感銘を受け、大学生になるといくつかのNPOに参加しました。
 その中で運営支援に来ていたコンサルタントの仕事ぶりを見る機会がありました。彼らのアドバイスによって運営が改善されるのをみて、素直に感動しました。それを機に「ソーシャルな活動にビジネスの力が加われば、大きな変化を起こせるのではないか」と考えるようになりました。
──ファーストキャリアにコンサルティング業界を選んだのも、それがきっかけですか。
松島 ええ。ビジネスを学ぶならコンサルティングファームで働くのが一番いいと考えました。いつかまたNPOに携わりたいと思っていたので、そのチャンスが来たら即座に掴めるように、自分のビジネススキルを最大限に高めておきたかった。
 だから、若手のうちから企業の経営層とともに経営課題の解決に携わり、短期間で濃縮されたビジネス経験を積めるコンサルティングファームをファーストキャリアに選びました。
福島 私が新卒でコンサルタントを選んだ理由も似ています。
 私は4年周期で自分のキャリアを進化させたいと考えていて、就職の際も「4年間で最も多く変化点を経験できる業界や職種は何か」を仕事選びの軸にしました。
 その観点から考えると、事業会社に入社した場合、その会社にとって大きな変化点がすぐに起きるとは限らない。10年経っても会社が変化しない可能性もあります。それに対し、コンサルタントは常にクライアントの変化点と向き合う仕事です。
 企業が外部にコンサルティングを依頼するのは、自社の力だけでは立ち向かえないほどの大きなチャレンジをするとき。コンサルタントになれば変化点を作り出す機会を数多く経験できると判断しました。

決め手は「実行」への強いこだわり

──数あるコンサルティングファームの中でも、なぜBCGを選んだのでしょうか。
福島 先ほど話したように、新卒入社した会社でテクノロジーに特化したコンサルティングに私としては限界を感じ、戦略系ファームへの転職を考え始めました。
 ただ、戦略を描くだけではなく、実際に物事を動かして変化点を作り出したかった。
 その点でBCGは、組織変革や営業改革などのプロジェクトを数多く実行し、大きなインパクトを出していました。
 「絵を描くこと」に注力する戦略系ファームもあるなかで、実行までリードして価値を生み出すことを重視するBCGなら自分にフィットすると考え、入社を決めました。
松島 入社の決め手となったのは「人」です。プロフェッショナルかつ人間味に溢れる方が多かった。私がインターンとして参加した時も、BCGのコンサルタントの方たちが親身になって学生たちに指導やアドバイスをしていたのが印象的でした。
 実は最後の最後まで就職先について悩んだのですが、BCGの役員と話をした際にこう言われたのです。
 「BCGのコンサルタントは企業が社運をかけるほどの大きなチャレンジを託されるのだから、刺激的な体験ができる。大変なこともあるが、こんなに面白い仕事はないよ」と。その言葉が刺さって、BCGに入社することを決断しました。
──入社前と入社後で、BCGのイメージや印象はどう変わりましたか。
福島 入社前の想像以上に、いい意味で戦略を実行することへのこだわりが強い会社だと分かりました。
 いまでも印象的なのが、入社直後のプロジェクト初日のことです。当時の上司である榊淳さん(現:一休社長)が、私をクライアントの支店や工場へ連れて行ってくれました。榊さんは自ら現場に足を運び、実行上の課題がどこにあるかを自分の目で確認していたのです。
 経営と現場のどちらか一方ではなく、両方を見て現場の課題を戦略にフィードバックしていくからこそ、実現性のある戦略を描けるのだと教えられた経験でした。
松島 私が入社して驚いたのは、若手でもやりたいことがあればどんどんトライさせてもらえること。
 私はNPOと企業をつなぐことに興味があったので、コンサルタントとして何かできることはないかと考えていました。
 BCGとして次につながるかは分からないにもかかわらず、その思いをマネージャーの方が応援してくれて、一緒にNPOにヒアリングに行くこともありました。アントレプレナーシップを持って行動する人を応援するカルチャーは、BCGの大きな特長だと思います。

BCGで学んだ「思考法」

──BCG時代を振り返り、最も学びになったことを教えてください。また、その学びは現在の仕事にどのように活かされていますか。
福島 現在も役立っているのが、「勝ち筋」を見つけるための戦略的思考です。
 多様な選択肢があるなかで、勝てる道筋を見極め、目の前のクライアントにとって最適な個別解を見つけるのがコンサルタントの仕事です。
 特にスタートアップの経営は、不確実性が高いなかで勝ち筋を見極めなければいけないので、BCGでの学びが大いに活かされています。
 プロジェクトを通じて、変革に伴う「チェンジカーブ」を体験できたことも貴重な学びになりました。
 BCGの書籍「チェンジモンスター」で紹介されているのですが、チェンジカーブとは、会社や組織の改革を進める過程で社員のモチベーションがどう変化するかをモデル化したもの。改革の初期は士気が上がり、決着に近づくと低下するといった一定のパターンが存在します。
 このプロセスをコンサルタントとして何度も経験したことにより、スタートアップのCOOとして変化点を作り出す過程でも、どのタイミングで何が起こるかを予測しながらチャレンジすることが可能になりました。
松島 私にとって最も役立ったのは、「ゼロから仕事を作る力」です。
 BCGのコンサルティングはテーラーメイドで、目の前にいる個々のクライアントに対して何ができるかを徹底的に考え抜きます。
 クライアントの課題や置かれた状況はそれぞれ異なるので、他社で成功した方法をそのまま使うわけにはいかない。新しいプロジェクトが立ち上げられるたびに、白紙の状態から何をすべきかを考えることが必要です。
 私が起業した時もまさに同じ状況で、プランやリソースが何もないところからファーストアクションを考えなければいけなかった。この難しいチャレンジができたのは、BCGでの経験があったからです。
 またBCGはいかにチームでアウトプットを最大化できるかを重視します。自分一人でできないことや苦手なことがあれば、できる人や得意な人を巻き込みながらチームでインパクトを出すことが求められます。
 私が共同創業したNPOは小さな団体ですが、国内外の企業や団体を広く巻き込んで、社会に大きなインパクトを作ることを目指しています。こうした周囲を巻き込む力も、起業後の経営に活かされています。

キャリアの「軸」が見つかる場所

──アラムナイのお二人から、今後のBCGやコンサルティング業界に期待することをお聞かせください。
福島 BCGに期待するのは、スタートアップとエスタブリッシュメント(大企業)をつなぐ媒介になることです。コンサルティングの価値の源泉は、ギャップがあるもの同士をつなげることにあります。
 かつては企業間や産業間にナレッジギャップが存在したので、トップ企業が持つ事例やノウハウをコンサルタントが他社に横展開し、格差を埋めた。日本企業と海外企業の間にギャップがあれば、グローバルの知見を国内に持ち込んで両者の格差を埋めました。
 そして現在最も大きなギャップを抱えるのが、スタートアップとエスタブリッシュメントだと思います。私が日本の大企業の人たちと話していても、考え方やマインドの差は縮まるどころか、むしろ年々広がっていると感じます。
 しかし日本の産業や企業を発展させるには、この両者をつなぐことが不可欠です。不確実な世界で大胆にチャレンジするスタートアップと、大規模な仕組みの中で物事を動かす大企業が、お互いのカルチャーや思考を取り込めば進化が生まれます。
 GAFAM(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)をはじめとするリーディングカンパニーが、スケールを拡大しつつスタートアップのカルチャーを保ち続けているのを見てもそれは明らかです。
 そうした媒介としての役割もBCGは担うことができると思うので、ともに日本から世界を目指すチャレンジができると嬉しく思います。
松島 私は現在イギリスを拠点に活動していますが、海外で仕事をしているとグローバルにおける日本人と日本企業の影響力の低下を実感することが多く、このままではいけないという思いが一層強くなりました。だからこそBCGには、日本のプレゼンス向上に貢献してもらえると嬉しく思います。
 BCGに在籍していた時に、「日本を元気にしたい」というモチベーションに溢れた人が大勢集まっていたことが印象に残っています。
 グローバルネットワークを活かしながら日本企業と伴走できる力を持ち、政府や官公庁の案件も数多く手がけるコンサルティングファームとして、さまざまなアプローチで日本企業や日本社会をますます良いものにするためのコンサルティングが展開されていくことを楽しみにしています。
──コンサルティング業界に興味を持つ読者に向けて、BCGにジョインして良かった点やキャリア形成のアドバイスを頂けますか。
福島 BCGに飛び込んだことは、私のキャリアにおいて大きな転換点になりました。
 BCGでは誰もが自らを日々アップデートし、速いスピードでキャリアを進化させ、活躍の場を広げていきます。そんな環境に飛び込むと、自分もチャレンジするのが当たり前になる。自分の成長サイクルを加速させる入り口として、BCGほど良質な学びと実践の場はありません。
 しかもBCGでは、「何を目指して自分をアップデートするのか」という問いを突きつけられます。いまでも覚えているのが、「自分は何のナンバーワンになるかを考えなさい」という上司の言葉です。
 総合力でナンバーワンにならなくていい。何か一つでも尖ったものがあれば、その分野や領域で高い価値を生み出せる。
 そう言われて自分は何で一番になるかを考え続けた末に、「テクノロジーとビジネスを掛け合わせて変革を生み出す」というキャリアの軸が定まりました。
 その後スタートアップに移ったのも、「テクノロジー×ビジネス」のBtoBプラットフォーム事業でナンバーワンになり、この分野で尖った存在になると決めたからです。
 自分を常にアップデートさせたいというマインドセットがある人であれば、BCGを起点にキャリアの可能性を大きく広げられると思います。
松島 私も自分の軸を見つけられたことがBCGにジョインしたことで得られたメリットだったと感じています。BCGは「多様性からの連帯」を掲げ、多様な価値観や強みを持った人が集まっています。
 そのなかに身を置くと、「自分は何が好きで、何が得意なのか?」と自然に考えるようになる。他人を鏡に、自分を内省できる環境があるのです。
 社会の不確実性はますます高まり、直近でもコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻など、想定外の出来事が次々に起こっています。5年先、10年先の世の中がどうなるかは誰にも分からないし、すべてが予定調和で進むことなんてありえません。
 それでも自分の軸となるものがあれば、どんな環境変化にも柔軟に対応しながら、自分の仕事やキャリアを未来へ向けて前進させていける。そのような自分の軸を磨いていくことができれば、キャリアを形成するうえで必ず自分の助けになってくれるはずです。
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