経産相、ロシア事業から撤退せず エネルギー安保「極めて重要」
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注目のコメント
エネルギーはスーパーマーケットでビールを買ってくるのとは訳が違います。買い手が一方的に強いわけではありません(そうした局面もありますが)。
1970年代のオイルショックの際、アラブの産油国はイスラエル支援国に石油禁輸措置をとりました。日本は中立であり、石油禁輸措置をとらないでほしいと、当時の三木武夫副総理が中東諸国に説明にまわりました。日本のメディアの中にはこれを「土下座外交」などと揶揄する向きもありましたが、こうでもしてエネルギーを買ってこないと国民・国民経済を守れないという話であり、政治家の方にはいざとなったらそれくらいしてもらわねば困ります。
そして、欧州は代替エネルギー(要は再生可能エネルギーをイメージされていますでしょうか?)に力を入れるのに、なぜ日本はというコメントもあるのですが、欧州は再エネの導入により温暖化対策を進めるという方針自体は変更していませんが、一方で、化石燃料(石油や石炭、天然ガス)の確保に向けた対策を進めています。
ドイツはLNGターミナル、アンモニアターミナルの建設にも動き出していますし(とはいえ、どちらも早くても5年はかかるでしょう・・)、経済相がUAEやカタールを訪問して、中東からの化石燃料輸出や水素輸出を増やしてもらおうという交渉をしています。ドイツには国内に褐炭がありますが、それでもロシア依存度を下げるためにいま必死にエネルギー政策のリバランスをしているところ。当面必死で取り組んでいるのは、化石燃料の確保です。
もちろん、そういう必死の生き残り戦略はできうる限り目立たぬようにしつつ、再生可能エネルギーの拡大を前面に押し出すようにするでしょう。
それに比べて日本では、国会で総理自らサハリンのLNG開発事業から撤退しないことを明言したことは(質問する方もする方ではあります)、スマートとは言い難いことは確かでしょう。ただ、この案件を日本が手離せば、天然ガスの大消費国となっている中国を利することになり、制裁の目的であるロシア経済にダメージを与えることが果たせるのかは疑問です。
エネルギーをイメージで語るコメントは、もう控えるべきで、我々も相当戦略的に生き残り策を考えていく必要があります。EUはこの危機を乗り越えるために代替エネルギー産業振興にさらに力を入れる事は間違いないと思いますが、ロシアへの依存度を下げるための方策について話すことの方が、撤退しない事を表明するよりもこの時期には大切だと思うのですが、なぜ撤退をしないことについて表明を出さなくてはいけないのでしょうか?
日本が撤退しても中国が引き受けるので実害はロシアに出ないというコメントもありますが、中国は唯一の親露大国である立場を利用して価格交渉を強めた形での供給を迫ると考えると、ロシアにとっては日本を供給先として維持しておきたいという思惑もあり得るとは思います。
このタイミングでこのような発言をせざるを得ないという国内事情があるのだとは思いますが、外交上スマートな選択なのかというと疑問です。以前も指摘したように当然の判断。
天然ガスは発電用なので原油以上に電力供給に直結。今冬の電力も綱渡りで停電リスクも。現在世界はLNG争奪戦で、仮に撤退分をスポット取引で調達すると超高値。
全量日本に輸入して日本のエネルギー安保に直結。撤退表明したシェルは中国、インドに売っており、投資家の圧力あってのビジネスとしての判断。意味が違い、同列に論じるべきではない。
さらに仮に撤退すると、ロシアはその分他に高く売れて喜ぶだけ。中国も食指を伸ばすだろう。