米、10年で赤字122兆円減へ 富裕層増税を提案
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「お金持ち」=資産家から税金を取ろうという発想はこのところとても活発になっています。しかし、現実には案外難しいです。市場がないものの資産価値をどう計算するか、海外に持っている資産をどこまで捕捉するか… 米国では、資産への直接課税はconstitutionに反するという見解もあるので、このような変則的な提案になっているのかと推測します。
米国では、この20年余り、富裕層の富は指数関数的に増えています。平均以下の人々の富も日本に比べれば増えていますが、給与の伸びだけなので、一次関数です。何も手をつけなければ、富の絶対額の格差は更に拡大するでしょう。ウクライナ情勢等を言い訳訳になんとか資産課税を入れたいというところでしょうが、議会では相当厳しい攻防が予想されます。
注目のコメント
「1億ドルを超える資産がある超富裕層に的を絞り、最低20%の税率を課す所得税改革案」で「今後10年間で1兆ドル(約122兆円)超の財政赤字を削減する」というわけですから、米国の富裕層は日本とは桁違い。キャピタルゲイン課税だ、富裕層への増税だ、といった声が我が国でも喧しいですが、年収1千万円を富裕層と見做す向きもある我が国で富裕層に的を絞って増税しても、これほどの財源は出て来ません。
経済が成長するなかで分配が歪んで超がつく富裕層が増えて格差が問題になった米国と、経済が全く成長せず中間層が等しく貧しくなったがゆえに僅かの格差が強く意識されるようになった我が国とでは、格差問題の本質が異なります。我が国で重要なのは規制を緩和し市場の機能を活かして経済を先ずは成長軌道に乗せること。それが財政を健全化し格差問題を緩和する最善の方法であるように思います。バイデン政権にとって、ウクライナ侵攻に伴う国防費の増大は想定外の支出増になっただろう。それだけで、富裕層増税が受け入れられやすくなるわけではないが、増税提案には、税制面での革新的な挑戦が含まれている。それは、未実現のキャピタルゲインに対する課税である。
経済学の課税理論においては、未実現のキャピタルゲイン税は、未実現のキャピタルロスに伴う税の還付とセットであれば、資源配分の歪みはそれだけ小さくできる意味では望ましい性質がある。現実問題として、富裕層ならば、未実現のキャピタルゲインに課税しても支払う原資が確保できるとみているのかもしれない。しかも、定率の課税なら、累進課税よりも悪影響は抑えられる。
ただ、市場価格がない資産についてキャピタルゲイン・ロスをどう評価するかは、課税上実務的な課題として残るだろう。