2022/3/30

【迫真】なぜ、日立の事業・子会社の売却が「前向き」なのか

NewsPicks ジャーナリスト
日立製作所の「変身」は、日本の大企業の「未来像」か?
近年、最大1兆円の巨額買収を繰り広げると同時に、数多くの子会社・事業の売却。日立化成、日立金属、日立建機、日立マクセル、日立物流、クラリオンを切り離すことを決断した。
いずれも赤字や傍流の事業・子会社というよりも、黒字で優良な事業・子会社だ。
こうして売上高は8兆~10兆円と横ばいで推移しながらも、その中身は完全に「別物」と化した。
大胆な事業売却は日立に限った話ではない。
実際、武田薬品工業が「アリナミンV」、資生堂が「TSUBAKI」という一般消費財事業を売却。シダックスはカラオケ事業、東急グループは東急ハンズを売却した。
なぜ今、企業は看板事業を手放してまで、変革に踏み切る必要があるのか。
その答えを探るべく、日立トップの東原敏昭会長を直撃。この3月末にCEO(最高経営責任者)から外れる東原氏への「CEOラストインタビュー」として、在任6年間の「決断」に迫る。
INDEX
  • 決断は早く
  • 離れた方が成長できる
  • 利益よりも「L」「R」
  • 社長の「バトン」
  • 日立にしかできないこと
  • 1兆円買収を「しないリスク」
  • これからの「利益」
  • 原点は「開拓者」

決断は早く

──これまでの日本で、東原さんほど数多くの大型売却を決断してきた経営者はいないはず。事業・子会社の売却に大反対する元役員、いわゆるOBの抵抗はありませんでしたか。
東原 売上高でみたら、(全体の3~4割に当たる)3兆円くらい入れ替えましたよ。昔であれば、OBが社長に文句を言うこともあったかもしれません。
しかし、私は59歳で社長になった。OBとは年が離れすぎているのか、文句を言ってくる人はそんなに多くありませんでした。
仮に文句を言ってきたとしても、私がこのように説明したら、皆さん納得してくれました。