【論点】ロシアボイコットで「芸術・文化」はどう変わる?
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文化や芸術、学問、スポーツが、政治から自由であることなど無理です。
ロシアの映画監督、ニキータ・ミハルコフは、『太陽に灼かれて』でカンヌ映画祭グランプリ、アカデミー賞外国語賞を受賞するなど、世界的に高く評価されたいくつもの名作で知られています。
彼は、今回の戦争に合わせて、『ウクライナの真実』と題するドキュメンタリー映画を発表し、ロシア軍の侵攻を正当化しました。
https://rumble.com/vx9k3d-the-truth-about-ukraine-from-film-director-nikita-mikhalkov-this-war-began-.html
第2次世界大戦の時だけでも、日本を含め、どれだけ多くの芸術家や学者が政府の戦争政策を賛美したか、枚挙にいとまがありません。与謝野晶子も山田耕作も、藤田嗣治も、みな日本軍賛美の作品を熱烈につくっていました。
ロシアを代表する代表する体操選手であったアリーナ・カバエワは、プーチン大統領の子供を4人産んでいる、いわば公式の愛人ですが、スイスの邸宅で暮らしています。その邸宅も、実質的にはプーチン大統領の資産で、凍結の対象になりうるでしょう。
文化や芸術やスポーツは、戦争に弄ばれる側です。さもなくば、末端で媚びを売る立場です。学問は、まあ、命を張って言うべきことを言うのが本来の筋でしょう。音楽界はとくに政府の支援を受けていることも多く、ロシア人アーティストの気持ちを思うと複雑です。プーチンと親しいので有名な指揮者ゲルギエフのケースでも、自分の首が飛ぶ or 戦争に反対する という究極の選択を迫られるわけですが、粛清を恐れて戦争反対の声明なんて上げられない。そしてマネジメントからも楽団からも解雇されました。
一方でボリショイ・バレエのプリマが侵攻を非難して退団するなど勇気のある行動も見られています。政府やプーチンとの近さ次第かもしれませんが、もし文化人が個人の意見を表明して粛清されるようなことがあれば、国際社会のロシアに対する目はますます厳しくなっていくでしょう。音楽を愛好する者にとって、今は非常に複雑な心境です。以前のように、チャイコフスキーやショスタコーヴィチを聴くことが出来ないとすら思います。
パーヴォ・ヤルヴィのように、世界的指揮者がこうしてこの問題を語ることは非常に大きなことだと思います。特に彼はロシアを含め世界中で活躍をしているエストニア人ですから、今の状況下において最もこの問題に言及するべき適切な人物であると思います。
ゲルギエフやネトレプコの問題は残念です。特に、ミュンヘン・フィルとゲルギエフの活動は、録音からはかなり充実していただけに、戦争が彼らを引き裂いたことにやるせなさを覚えます。
個人的なことになりますが、先日、東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に、世界的音楽家でロシア人指揮者のミハイル・プレトニョフが登壇し、ベドルジハ・スメタナの『わが祖国』を演奏する、というコンサートがありました。私は逡巡しながらも、スメタナの祖国に対するメッセージを受け止めたいと思い、足を運びました。演奏は言うまでもなく素晴らしかったこともあるのですが、ウクライナの人々のことを思うと、途中で涙が出そうになりました。
アンコールで、プレトニョフは、バッハの「アリア」をストコフスキー編曲版で演奏しました。プレトニョフはウクライナ侵攻に対して直接は何も語らなかったけれども、間接的には述べています( https://www.tpo.or.jp/information/detail-20220302-01.php )。しかし、何よりも、この曲の鎮魂のような演奏で、明確にメッセージを語っていたと思います。
このインタビュー記事でパーヴォ・ヤルヴィが語るように、殆どのロジア人芸術家もこの侵略戦争に対しては本当はNOと語りたいのかもしれません。願うことは、それらが明確な世論となって、この愚かな戦争を一刻も早く止めるように、為政者に働きかけが行われることです。