花粉症、がん死亡率半減
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出典論文を読んでいない（見つけられていない）ため、コメントが難しいですが、花粉症とがんの関連に関する報告はこの研究も含め、ほとんどが症例・対照研究と呼ばれるタイプの研究で、「花粉症」が自己申告による診断である点などにも注意が必要です。
このような研究の場合、「関連性」は示すことができても、「因果関係」を示すことはできません。すなわち、「花粉症があるから、がんが減る」かどうかは分かりません。
この記事内では、紹介された研究を支持するように、他の研究でも同様の結果が得られている点のみを紹介していますが、これはフェアではないでしょう。実際に、逆の結果を示した報告もあります。
スウェーデンから13万人以上のデータを集めて報告した研究では、むしろ、鼻で生じるがん、精巣がん、前立腺がんなどのがんが花粉症の方に多い傾向が報告され、花粉症が「保護的に働く」仮説に一石を投じています。
今回紹介されている研究では、9000人のデータということですので、それなりのバイアスがかかっていることが懸念されます。（調整されているかもしれませんが）例として、花粉症の人ではタバコを吸っている人の割合が少なく、結果としてがんが少なかったが、実は花粉症かどうかはがんの死亡率とは関係なかった、タバコを吸っているかどうかが全てだったというようなことです。
こういったことから、花粉症とがんの関係について、本研究結果が十分真実に近いとは言いにくいかもしれません。
参考文献
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.28873「花粉症ががんの死亡率を半減させる」かのようなタイトルになっていますが、本文では「花粉症を発症するような方は、がんになりにくい可能性がある」ということを伝えています。花粉症とがんの共通に関係する因子が自己免疫の能力であることを考えると科学的な裏付けがある話ですが、（タイトルから連想させられる）花粉症ががんを撃退するという趣旨とは異なります。
花粉症は花粉を抗原として、第1段階でヒトの免疫システムが体内に抗体を作ります（感作）。そして抗体がある程度蓄積された状態で抗原が入ってくると強い免疫応答が起こる（発症）という順序で起こります。
免疫が低下している状態では免疫応答の力が弱くなり、花粉症も起こり難くなることが知られます。免疫低下は加齢によっても起こりますが、加齢でがんが増えるのは免疫低下のせいだと言われています。年をとると花粉症が治ることがあるのも免疫応答の低下ではないかと言われています。
そうなると、花粉症の薬（一般に免疫抑制剤＝抗アレルギー剤）によるがん発症の懸念が当然に出てきます。ただし花粉症での処方には全身への免疫抑制を及ぼすタイプのものはあまり使わないはずで、使う期間が短いことも関係し、花粉症治療薬（抗アレルギー剤）によりがんになりやすくなるという議論は（今のところ）ありません。
記事にある東京大学の研究は、群馬県内の40～69歳の男女8796人を8～15年間追跡し、がんの死亡リスクと花粉症の関連を調べたところ、花粉症の人では52％低かったというものです。
他のアレルギー性疾患との関係では、(1) スペイン国立がん研究センターの研究では、（花粉症と同様のアレルギー疾患である）「喘息」との関係を調べた結果、喘息の人がすい臓がんにかかるリスクは、ない人に比べ36％低かった。(2) 米国南カリフォルニア大学のチームの研究では、（花粉症と同様のアレルギー疾患である）「アトピー性皮膚炎」などのアレルギーのある人は、ない人に比べ、大腸がんを発症するリスクが14％低かった。など、アレルギー疾患のある方でのがん発症率が（結果的に）低いという報告がされています。同種の研究結果は他にも存在します。今年も花粉症に苦しめられています。
最近知人から、舌下免疫療法を行なって、花粉症の症状がなくなっと聞き、今年こそ取り組むぞと心した瞬間にこの記事を読みました。
ガンによる死亡率が半分になることと、毎年の苦しみを、天秤にかけると。。。悩みます。
