2022/3/18

インプットだけで、“学んだつもり”になっていないか?

NewsPicks Brand Design editor
 オンラインで何かを学ぶことは、いまや当たり前になっている。一方でその学びのほとんどが「インプット」のみ。身につけた知識を仕事に活かせているかと問われれば、自信のない人も多いのでは。
 
 このような状況の中、インプットよりもアウトプット、見放題よりもライブセッションにこだわるサービスが、ビジネス・ブレークスルーが運営する「ビジネスアウトプットGYM」だ。

 その名の通り、スポーツジムに通うような感覚で、ビジネススキルを鍛えられるこのサービス。2020年6月にローンチされて以降、個人・法人ともに着々と会員数を増やし、個人の継続率は実に90%を誇る。

 どのようにアウトプットのスキルを身につけ、習慣化するのか。ビジネス・ブレークスルー大学副学長の宇田左近氏と、ビジネスアウトプットGYM講座責任者の高松康平氏に聞いた。

インプットだけでは意味がない

「最近、成長できていない気がする…」そう思い悩んでビジネス書を読んでみても、内容はすぐに忘れてしまい、仕事に活かせている実感もない。
 そんなビジネスパーソンに圧倒的に足りていないのは、「アウトプット」ではないか。その課題認識のもと、2020年にローンチされたオンライン型のビジネスプログラムが、「ビジネスアウトプットGYM」だ。
「勉強しているはずなのに成長を実感できないのは、情報をインプットしただけで満足して、実際の行動に移せていないから。
 たとえばダイエット本を読んでダイエット方法を熟知したとしても、それを実践しなければ何の意味もないですよね。ビジネススキルの本を読んで何も行動していない人は、それと同じ。
 アウトプットして初めて、インプットした知識が意味を持つと言っても、過言ではありません」
 そう語るのは、ビジネス・ブレークスルー大学の副学長、宇田左近氏。ビジネスアウトプットGYMのインストラクターも務める。
 さらに、ビジネスアウトプットGYM講座責任者である高松康平氏は、現代のビジネスパーソンにアウトプットが重要な理由をこう考察する。
「今組織に求められているリーダーは、自分のスタンスを示し、行動できる人です。
 先が見えづらいVUCAの時代と言われるなかで、『私はこう思う』という自分の意見、つまりは自分なりのアウトプットができるリーダーがいれば、少なくとも組織は前に進めます。
 逆に、『あの道に進むのがいいのか、それともこっちなのか』と迷い続けているリーダーや、批判はできても代案は出てこないというリーダーには、あまりついていきたくないですよね。
 アウトプットができるリーダーがおらず、身動きが取れなくなっている組織は少なくないと感じます」(高松氏)

人間は基本的に、怠惰だ

 では実際に、ビジネスアウトプットGYMは、他のオンラインプログラムと具体的に何が違うのか。
 まず前提として、ビジネスアウトプットGYMのセッションは、ライブ形式が基本。もちろんアーカイブ動画も残されるものの、リアルタイムで主体的に参加するのが醍醐味だ。
 受講生がその場でアイデアを発表したり、チャットに意見を書き込んだりと、セッションは双方向で進んでいく。
 セッションが開催される時間帯は、平日の21時から1時間。短時間に濃縮された学びのスタイルも、特徴の一つと言える。
 セッションのテーマは、問題解決やアイデア発想、事業戦略やビジネスモデル、DXやサイバーセキュリティなど多種多様。まさにスポーツジムのように、バランス良くさまざまな部位を鍛えられるのだ。
 長年ビジネスパーソンの学びに携わってきた宇田氏は、その場で考えるという“ライブ感”が、学びを体得するために欠かせないと話す。
人間って基本的に、怠惰なんですよ(笑)。講師の話を受け身で聞いているだけでは、どんどん頭が楽な方に向かってしまう。結果的に、セッション後には何も頭に残っていないとなりかねない。
 ですが、何かアウトプットするとなれば、焦って頭が回転し始めます。知識の吸収量も、格段に上がる。その場でアウトプットを求められるライブ形式の重要性は、そこにあります」(宇田氏)
 そのライブ感を大事にするため、ビジネスアウトプットGYMでは、予習や事前準備は課されていない。とはいえ、準備なしにアウトプットを実践するのはハードルが高いと感じる人も多いのではないか。
 その不安を払拭するために、ビジネスアウトプットGYMが特にこだわるのが、“雰囲気づくり”だという。
「月並みに聞こえるかもしれませんが、とにかく“楽しく”学べる場にすることを、徹底的に意識しているんです。
 シーンとした空気の中で発言するのは誰だって嫌だし、せっかく意見を言っても上から目線で否定されたらやる気がなくなりますよね。
 だからこそビジネスアウトプットGYMの講師は、受講者と対等な存在として『インストラクター』と呼んでいます。
 “偉そうに教える”のではなく、一緒にアウトプットを考えてくれる存在。プロフェッショナルでありながら、そこに共感してくださる方に依頼しています。
 動画を見ていただくと雰囲気が伝わると思うのですが、『こんなに楽しいビジネススクールって、あるんですね』と驚かれるくらいです(笑)」(高松氏)

挫折しがちな会計知識も、もう怖くない

 ではここから、ビジネスアウトプットGYMの具体的なセッション内容を見ていこう。
 まず初めに紹介したいのが、「財務会計・財務情報」のセッションだ。
 財務会計の知識は、ビジネスパーソン必須のスキルである一方で、独学が難しい分野の代表的存在だ。
 分厚い財務の本を読み1章目で挫折したり、なんとか読み終えた頃には最初に書いてあった内容を忘れてしまったり、なんて経験をした人もいるのではないか。
「財務会計・財務情報」のセッションでは、公認会計士でM&AのアドバイザーをしているBBT大学教授の大原達朗氏と参加者が一緒に、毎月1回1社、企業の決算短信をその場で読み解いていく。
 実践から入るアプローチで、疑問もその場で解決できるため、一人で躓いて挫折することもない。
 また宇田氏が担当するのは、企業研究のセッション。似ているようで異なる特徴を持つ2社の業績やビジネス戦略を比較することでその業界を読み解くという、他のオンラインプログラムでは類を見ない独自の内容だ。
「1社だけを分析してもわからないことが、2社を比較して相対化することでイシューとして浮かび上がってくる。企業や業界分析のトレーニングになればと考えています。
 セッションの中では、『あなたがこの会社の社長だったらどうするか』をその場で考えて、発表してもらうことも。私が共有する資料も、自分の思考回路をそのまま書き込んだ手書きのものを使っていますよ」(宇田氏)
アース製薬と小林製薬を比較する企業研究のセッションで使われた、宇田氏手書きのマトリクス。とりあえずマトリクスにしてみようということで「トリマト」と呼んでいる。
 さらに、新たに開始し人気を博しているのが読書会セッション。ビジネスアウトプットGYMでは、『よむよむGYM』と呼ばれている。
 このセッションでは、前半の30分であらかじめ指定された本を読み、後半の30分で受講生同士で意見や考察をシェアする。
「一人で読むだけでは得られないより深い学びを得られることに、価値を感じてもらえているのでは」と、高松氏。今年2月の課題図書は、オードリー・タン氏の『自由への手紙』だったという。
「コロナ禍でさまざまなコンテンツが充実している中で、学びに時間を使ってもらうには、エンタメに負けないくらいエキサイティングなセッションじゃないといけない。
 競合はYouTubeやスマホゲームだと思って、セッション自体にも工夫を凝らしています」(高松氏)

「おっしゃる通り」に、サヨナラ

 アウトプットも、単発で終わっては意味がない。宇田氏が強調するのは、アウトプットを“習慣化”する重要性だ。
「本を寝る前に30分読もうという風に、インプットを習慣化できている人って、結構多いんです。ですが本当に必要なのは、アウトプットの習慣化。これに気づいている人が、驚くほど少ないんですね。
 確かになんとなく本を読むよりも、自分の考えを発信するのは労力が必要です。でも、だからこそ成長できる。
 まさにジムに通うように、ビジネスアウトプットGYMに参加することを習慣化してしまえば、アウトプットのリズムは自然に生まれると思いますね」(宇田氏)
 繰り返しトレーニングする重要性を語るのは、高松氏。
「子どもの頃って、たとえば算数や漢字を覚えようと思えば、当たり前に反復練習をしていたと思うんです。
 ですが大人になると、繰り返し練習する機会がぐんと減ってしまう。単発の研修はあっても、それだけではなかなか実践レベルまで身につかないですよね。
 そういう意味でも、ビジネスアウトプットGYMは、実践トレーニングの場として使っていただきたいんです。アウトプットに特化した学びの空間は、なかなか希少性が高いのではと自負しています」(高松氏)
 ビジネスアウトプットGYMで学ぶことで得られるのは、単にアウトプットする能力だけではないという。ビジネスパーソンとしてどう成長し、現場に活かせるのか。
「わかりやすく言えば、“おっしゃる通りでございます”とは、もう言わなくなると思います(笑)。
 つまり、自分の頭でクリアに考えられるようになって、やみくもに人の言うことに賛同しなくてよくなる。
 もっとこういうアイデアがあるんじゃないか、ロジカルに考えたらこれが最適解ではないかと、ビジネスの現場で建設的な意見が言えるようになると思います。
 そういった発信、行動が蓄積されることで、リーダーとして組織の中で能力を発揮していけるようになるのではないでしょうか」(宇田氏)