査読前論文を無料公開する日本向けWebサイト「Jxiv」 JSTが24日に開設
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研究者じゃないと何のことだかわかりにくいと思うので、少し補足します。
研究を発表する場はたくさんありますが、多くの人が目指し、また学位取得や採用・昇任に必要となるのが「査読付き」の論文誌や国際会議です。査読付きとは、投稿された論文が関連の専門家に読まれ、点数付けされて採否が判定されることを意味します。査読がないと、SNSで適当なことを言っていると信憑性がないのと同じで、どんなに素晴らしい研究をしても一般的には評価されません。
さて、査読付き論文誌、国際会議には問題があります。それは査読に時間がかかり、さらに不採録のリスクが有ることです。論文を投稿して半年後とか1年後に不採録の連絡が来ることもザラです。そうなると、その間に他の研究グループから似たようなアイデアが当然出されて先を越されることが出てきます。それを防ぐために、「我々はこんな論文を投稿していますよ」と示し、先鞭をつけておくことが重要になってきます。そのために登場したのがarxivを始めとする論文投稿サイトです。
身近な例で例えると、企業が「XXという技術を開発。特許申請中。」とリリースすることに似ています。そんなリリース、特許が取れてからすればいいのにと思わなくもないですが、先に発表しておくことでライバルたちに知らしめる効果があります。
我々のラボでもarxivに投稿することもありますし、あえて隠すこともあります。場合によって様々な戦略をとります。
すでに多くの方が指摘されていますが、arxivなど他のサイトがある中、どこまでこのJxivが利用されるか見守りたいと思います。当然、運用コストがかかります。そのコストに見合うだけのメリットが有るのか。査読前論文は、経済学では、多くはDiscussion PaperとかWorking Paperなどの形で公開している。多くは研究者の所属機関ごとに、それぞれのサイトで公開している(大半は無料で)。さらに、国際的なアーカイブサイトとして、RePEc(http://repec.org/)もあり、査読前論文も多く収録されている。だから、査読前論文を無料で閲覧できること自体は、経済学では、何ら珍しいことではない。
Jxivの付加価値は、どこにあるか。1つに考えられるのは、学問分野横断的なアーカイブになるところだろう。これはなかなか得難い情報提供サービスである。より広く他の学問分野の文献をも検索できるなら、極めて有用で、新たな研究の種も生まれてこよう。