2022/2/28

【LUUP】電動キックボード「規制の壁」を突破する全プラン

株式会社ニューズピックス NewsPicks編集部
近年、国内のスタートアップでも重要性が叫ばれるようになった「ルールメイキング」。ルールとは「与えられたもの」でも、「とにかく守るもの」でもなく、企業自ら行政に働きかけることで、変更・形成していくべきという戦略だ。

国内のルールメイキングにおいて、今注目が集まっているのが、電動キックボードに関する法改正の動きだ。

アメリカやヨーロッパを中心に、新しい交通インフラとして普及が進む一方で、日本では運転免許証の携帯やヘルメットの着用義務など厳しい制約が存在することから、これまで普及が進んでいなかった。

電動キックボードを普及させるには、安全性を実証し、現行の道路交通法を改正しないといけない。そこで、国内の事業者たちはここ数年、ルールメイキングに取り組んできた。

2019年、電動キックボード事業者を中心とした5社で「マイクロモビリティ推進協議会」が設立されると、同年に国内初の電動キックボードの実証実験を実施。20年と21年(継続中)には、公道での実証実験の実施にこぎ着けた。

そして昨年12月。警察庁が、大幅な規制緩和を含めた道路交通法の改正案をまとめたことがニュースで報道された。この改正案が承認されれば、電動キックボードが国内でも普及する土台が整うと、注目を集める。

この一連の立役者となったのが、電動キックボードのシェアリング事業を展開するLuup(ループ)だ。

東京や大阪といった都心部では、エメラルドグリーン色の車体を目にする機会も増えただろう。8事業者で実施した実証実験では、断トツの約48万キロの利用実績を誇る。

驚くべきは、業界団体の設立や各制度の活用などは全て、28歳の岡井大輝社長が中心となって行ってきたということだ。

ルールメイキングのハードルが高いと言われる日本で、ロビイングの経験もない彼はいかにしてここまで辿り着くことができたのか。岡井社長を直撃した。
INDEX
  • 長期戦は「覚悟していた」
  • 実証実験のための実証実験
  • 「協調」と「競争」の線引き
  • キックボードを持参
  • 「プロダクト作り」とセット
  • 経営者がやらないと意味がない

長期戦は「覚悟していた」

──電動キックボードをめぐり、警察庁が道路交通法の緩和を検討していることが、昨年の12月に報じられました。創業から約4年、これだけ長期戦になることを、最初から想定していたのでしょうか。
岡井:電動キックボードは、アメリカやヨーロッパを中心に、既に手軽な交通手段として普及しています。しかし日本においては、運転免許証の携帯やヘルメットの着用義務など複雑な規制があり、利用が広がっていませんでした。
日本で電動キックボードの利用を広げるためには、そうした現行のルールの適正化が必要でした。しかし、日本でルール整備を試みる場合、石橋を叩きすぎるくらいに慎重に前進しないと、すぐに失敗すると思いました。ですから、時間がかかることは、創業した時から覚悟していました。
ルール整備を働きかけるにあたり、大きく2つの選択肢がありました。
ひとつは「ディスラプト型」と呼ばれる手法。現行の法制度上はグレーなものでも、取りあえず始めてみて既成事実化することで、最終的に法改正に持ち込む戦略です。
もうひとつは「対話型」。自治体・省庁や地元住民と対話しながら、オーケーをもらった分だけ少しずつ進めていくやり方です。