2022/2/8

【解説】時間管理が苦手な人へ。「先延ばし」から脱け出す仕事術

NewsPicks編集部
大人の注意欠如・多動症(ADHD)で、特に悩む人が多いのが、時間管理やスケジュール調整の問題だ。
それはやることを「先延ばし」しがちという、ADHDの特性の一つが大きく影響している。
なぜ、やるべき仕事に手をつけられず、とっかかりが遅くなり、ギリギリになってしまうのか。そのメカニズムから対処法について、ギリギリ体質を自認する記者が、発達障害の認知行動療法に詳しい臨床心理士の中島美鈴さんに聞いた。
紹介する先延ばし対策は、ADHDの人に限らず、多くの人に参考になるはずだ。

コロナ禍で顕在化した困りごと

──コロナでリモートワークが普及し、自宅で仕事をする時間が増えました。発達障害の人にどのような影響が出ていますか。
中島 自閉スペクトラム症(ASD)の方は、歓迎会や送別会などがなくなって、ホッとしている人が多いのが特徴です。
ただし、昼夜逆転してしまったり、一人で時間を忘れてひたすら集中して仕事をしすぎてしまうということもあるようです。
ASDの人はいったん一つの仕事の細部にこだわりだすと、このプログラムはこう書くと美しいとか、こだわり過ぎてしまう傾向があるためです。そして、気づけば食べる時間や寝る時間も犠牲にして仕事をし続けてしまうこともあるようです。
それでもそうした努力が評価されれば報われますが、リモートワークのため、上司や取引先の意向が細かくチェックしづらく、膨大な時間をかけた割に求められていた仕事ができていないこともあるようです。これでは思うような評価が得られず、無気力になってしまいます。
注意欠如・多動症(ADHD)の方は、リモートワークでさまざまな困りごとに直面しているという声をよく聞きます。
ADHDの中には片付けが苦手な人が多いのですが、今までは出勤したり、外出したりして、自宅が散らかっていてもある意味ごまかすことができていた。しかし、コロナ禍でずっと家にいて、人にも会えないとなると、ごまかし切れなくなり、鬱々としてしまう人がいます。
また、自分の生活をマネジメントできないという点については、ASD、ADHDに共通して困っている人がいるようです。
特にADHDの人は、リモートワークで先延ばしがやめられない人が多い印象です。職場では周囲の目もあるのでなんとか仕事ができていたけれど、自宅では仕事に手がつけられず、朝も起きられなくなるなど、ルーズな自分に自己嫌悪になっている人もいます。

ADHDの傾向を知るチェックリスト

──先延ばしは、ADHDの人に典型的な特徴の一つと言われていますね。
先延ばしはADHDのみなさんがよく話す特徴です。いつもギリギリになってしまう、時にギリギリアウトになってしまうこともあります。
ただ、特に若い人は、仕事に慣れていなかったり、経験が浅いために、仕事を完成させるための手順がはっきりしなかったり、その手順ごとの所要時間が読みにくかったりするため、スケジュール管理が上手くできていないという可能性もあります。先延ばししがちな人=ADHDとは限りません。
先延ばしの問題を考え得る上で、まず、どんな人がADHDの傾向を疑った方がいいのか、簡易的なチェックリストで確認してみましょう。
このリストはADHDを診断するためのものではなく、あくまで傾向を知るためのものです。また、いくつ以上チェックが入ったらADHDの傾向がある、というものでもありません。「ぎりぎり」といっても、試験前日に徹夜で勉強した、くらいのことは誰にでもありますよね。
ただし、上記の項目に関連して、離婚、友人関係の破綻、解雇、留年など、生活に大きな影響を及ぼしたり、年単位での大きな失敗をしたことがある項目が1カ所でもある人は要注意です。
ちなみに、年単位の失敗というのは、大学入学試験に合格したのに、入学手続きを忘れるといった類いのことです。私は実際にこれをやらかしたことがあります。
そこまでではないけれど、傾向がありそうだなという人は、ADHDの人が実践している対策を真似することで、生活の破綻を防ぐことができるようになると思うので、これからお話する先延ばしの対処法を参考にしてみてください。

なぜ、先延ばしするのか

──なぜADHDの人は「先延ばし」してしまうのでしょうか。
先延ばしのメカニズムに沿って説明しますね。