原発・天然ガス、条件付きで「グリーン」投資認定へ EU最終案
コメント
注目のコメント
ドイツやオーストリアなどは反対に回っていますが、フランス発のこの流れに抗ったところで、逆転はかなり難しいと予想されます。
そうなると、気になるのがドイツの「孤立」です。主要国レベルで唯一空気を読めない(読まない)ドイツが、EUの運営にどのような作用をもたらすか。とはいえ、今のドイツでは複数の原理主義が交錯しており、ドイツ自体が沈みつつある気もします。日本ではどうしてもタクソノミーにおける原子力の扱いが注目されがちですが、欧州では化石燃料である天然ガスを条件付きでグリーン認定することが原発同等あるいはそれ以上の論争になっています。
EU域内には原発・石炭と決別した代償として移行期に天然ガスに頼って脱炭素を目指すドイツのような国もあれば、化石燃料に頼らず原発を活用して脱炭素を目指すフランスのような国もある。中東欧は当面どちらも必要だと考えているし、デンマークのように化石燃料も原発も不要だと考える国もある。原発、天然ガスの扱いはどろどろしたEU内の政治カードになってきました。
今回のEUタクソノミーは、その是非は別として気候政策とエネルギー安全保障、経済政策のトリレンマに対する27加盟国の均衡解なのです。これから加盟国の閣僚で構成するEU理事会と欧州議会でそれぞれ審議されます。オーストリアやルクセンブルクは法的措置も視野に入れるなど不確定要素はありますが、加盟国が原案を覆すことは極めて難しい情勢。どんでん返しがあるとすれば、欧州議会でしょう。現在のガス焚発電所(コンバインドサイクル)のCO2排出量は約340g/kWh近辺ですので270gにするためには水素の混焼などが前提の議論です(コンバインドサイクルでない場合はもっと排出量が多い)。20年間で年間550キログラム以下という基準もあるので排出量の削減を後倒しにすることも可能です。
今の技術で最大の30%混焼でも達成は難しいとの見立てで、この割合を引き上げる必要がありますが業界では2030年には達成可能との意見も多いです。もっとも水素自体が再生可能エネルギーから作られたものでないとこの計算も意味がありません。
もう一つの問題は水素の値段です。経済性が合わなければ実用化されませんので中東や豪州での大規模な水素生産による価格低下が必要となります。