2022/2/3

【直撃】メルカリの秘密部隊、パブリックアフェアーズとは?

今、世界中で注目を集める「ルールメイキング」。
ルールとは「与えられたもの」でも、「とにかく守るもの」でもなく、企業自ら行政に働きかけることで、変更・形成していくべきという戦略だ。
元々はグローバルビジネスで採用されることが多かったが、近年は、国内のスタートアップでも、重要性が叫ばれるようになった。
背景には、テクノロジーが発展しビジネスモデルが変わったことがある。現行の法律や規制は、新しいビジネスが登場することを想定していない。
そのため、時代遅れのルールや過度な規制が新たなビジネスの芽を摘んでしまう。つまり、ルールをアップデートする必要性が、社会的に高まっているのだ。
そこで近年は、スタートアップでも、ルールのアップデートを担う専門部署を設立する動きが出てきている。
中でも、ロールモデルになっているのがメルカリだ。日本企業としては珍しく、経営の直轄組織として、十数人規模の専門部署「パブリックポリシー」を持つ。
メンバーには、元官僚や元政治家も名を連ね、官公庁や政治家に対し、積極的な政策提言を行っている。
そこで、本稿ではメルカリ執行役員兼パブリックポリシーのトップを務める吉川徳明さんにインタビュー。ルールメイキングが経営そのものに、どこまで影響力を及ぼしているのか解説してもらった。
INDEX
  • 情報の発信者にアプローチ
  • ルールメイキング「攻め」と「守り」
  • 「最大公約数」を探す
  • ルールメイキングも“アジャイル”で
  • 戦略から「制約」を取り除く
  • パブリック・アフェアーズ≠ロビイング
  • 法律家よりもPR人材

情報の発信者にアプローチ

──メルカリは、日本企業としては珍しく、パブリック・アフェアーズの専門部隊(パブリックポリシー)を十数人規模で抱えています。
吉川:私が入社した当時(2018年)は、今のような専門部隊はなく、法務の中のいちチームとして、数名のメンバーとともにパブリック・アフェアーズを立ち上げました。
その後、専門部隊として法務から独立し、人数も数年で十数人に増えました。
なぜこれほどの規模が必要なのか。それは、メルカリの事業領域が多岐にわたり、インターネットサービス以外の領域にも進出し、社会との接点が増えているからです。
eコマースサービスや決済・金融サービスはもちろん、直近では物流や暗号資産の事業もあります。
業界ごとに異なる法律や規制が存在するため、ビジネス領域が多岐にわたれば、その分パブリック・アフェアーズの人数も必要になってきます。