Josh Smith

[ソウル 24日 ロイター] - 「極超音速」兵器と称する飛翔体を含め、北朝鮮がミサイル発射実験の頻度を高めている事実は、同国にとって関連する技術者や科学者の重要性が増していることを意味する。彼らは政府内で重要な地位に就いているが、外部からは実態が見えづらい。

彼らはどういう教育を受け、どんな役割を担っているのか。金正恩総書記は、特に3人の幹部に信頼を寄せている。また、発射実験に立ち会った顔ぶれを見れば、そのミサイルの開発状況が分かると、専門家は指摘する。

<科学者>

ミサイルの研究開発に携わっている中堅および実務レベルの科学者や技術者の氏名や役職はほとんど知られていない。専門家によると、教育や訓練に多くの資源と努力を割いているため、雇用が保証されているようだ。亡命したり、政治的、社会的に体制を妨害しないよう、特別な地区に隔離されている。

米スティムソン・センターの北朝鮮専門家、マイケル・マデン氏は「経済担当の幹部、さらには軍司令官とも異なり、余人をもって代えがたい人材だ」と解説する。

多くは金正恩国防大学で教育を受けている。国防大学は防衛関連の科学技術専門家の養成機関で、「極超音速ミサイル技術」を専門とする科を新設したと報じられている。

米バージニア州アーリントンに拠点を置く調査分析機関CNAのケン・ゴーズ氏によると、科学者や技術者はしばしば複数のチームに分かれ、似たようなタイプの兵器の設計を競う。どの技術が最も有望かを確認するため、複数のルートで検討を進められるようになっているという。

ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)の2018年の調査によると、北朝鮮の科学者が海外の研究者と協力し、共同で執筆した論文のうち、軍事と民生両方で利用可能な「デュアルユース技術」、大量破壊兵器、その他の軍事目的で重要だと確認できるものが少なくとも100本ある。

<政府機関の高官>

金正恩氏はミサイル開発のけん引役として3人の幹部に信頼を寄せている。

元空軍司令官の李炳哲(リ・ビョンチョル)氏、経験豊富なロケット科学者の金正植(キム・ジョンシク)氏、兵器の開発・調達部門を率いる張昌河(チャン・チャンハ)氏だ。

また、参謀総長の朴正天(パク・ジョンチョン)氏も戦略兵器の製造部門で重要な役割を担っていると、CNAのゴーズ氏は指摘する。「軍需産業の分野ではこの数年間に多くの変化が起きている」と、ゴーズ氏は言う。

朴氏は金氏が立ち会わなかった最近のミサイル発射実験の多くを監督した。金氏が実験に立ち会うことは昨年一度もなかったが、今年1月の極超音速ミサイル発射は一度視察している。

また、昨年は戦略兵器製造部門のトップにユ・ジム氏を任命する出来事もあった。マデン氏によると、ユ氏は以前、イランにある北朝鮮の主要な政府系兵器商の代表を務めていた。

<組織>

第2自然科学院(SANS)とも呼ばれる国防科学院(NADS)は、北朝鮮のミサイル開発を監督する立場にある。

マデン氏によると、兵器の開発状況は実験に参加したと報じられた顔ぶれから占える場合が多い。

例えば参加者がNADSの関係者に限られる場合、システムはまだ研究・開発段階だということを意味する。NADSと第2回経済委員会の関係者が両方とも立ち会っているなら、開発から生産、製造段階に移行していると読み取れることが多い。

また、最近の列車移動ミサイル実験のように、実験に軍の参謀本部職員が参加する場合は通常、システムが完成し、配備されることを意味している。

マデン氏によると、現在はミサイルと核兵器が完成して作戦行動に即応できるようになった兆候がある。

<海外からの支援>

専門家らによると、北朝鮮のミサイル計画は旧ソ連、その後はロシアから受けた支援に根ざしており、最新の極超音速ミサイルのブースターも旧ソ連が設計したものに類似している。

1990年代以降にこうした支援がどの程度継続しているかについては議論がある。

米国が特定し、直近の制裁に至った最新情報によると、NADSと関連のある複数の北朝鮮人が中国とロシアに滞在、大量破壊兵器とミサイルの開発計画に必要な資材や技術情報を収集し続けている。少なくもロシアの通信会社1社と同国人1人から支援を受けている。

欧州のミサイル専門家、マーカス・シラー氏は、北朝鮮のミサイル発射実験成功は外部から支援があったことを示唆しているとみている。

しかしシラー氏によると、金正恩氏が実権を握ってから北朝鮮のミサイル実験は以前よりも失敗するケースが多く、同氏が父や祖父よりも国産ミサイルの実験を増やしている様子が読み取れる。