2022/1/24

【新教養】冷笑主義は、もう終わりにしよう

NewsPicks CXO
ゆっくり考えたいけどせわしない。変わりたいけど変われない。今年こそはちゃんと考えたいこと、ありますよね。
気候変動だって自分のアタマで考えたいし、日々の習慣、仕事や住む場所、そして人生の目的まで、見直したい。
これらは、何もわたしたち日本人だけのイシューではありません。世界を見渡せば、誰しもが同じようなモヤモヤに直面する、そんな時代の局面にありそうです。
そこで今週の特集「Think about ***」では、世界中の知性たちの思考の形跡をセレクトしました。未邦訳の極上コンテンツばかりです。
第1回のテーマは「人類は邪悪か?」
パンデミック下の人間の行動を振り返ると嫌なことばかりでした。人間そんなもんだよね──オランダの若き知の巨人、ルトガー・ブレグマンは、そんな冷笑主義にNOを突きつけます。
初回は米ニューヨーク・タイムズの新Podcast番組「Sway」から、NewsPicks編集部が独占翻訳してお届け。世界のDeep thinkerたちと一緒に、じっくり考える1週間を。
INDEX
  • ①ナルシストが生き延びれない理由
  • ②権力者の「脳」の中
  • ③メディアが冷笑を加速する
  • ④こうしてダボスは「炎上」した
  • ⑤気候変動は「運命論」じゃない
  • ⑥UBIは、大衆のベンチャーキャピタル
カラ 人は、人間の本性に対して悲観的だ、そう思うかもしれません。でも、違うのです。ブレグマンは著書『希望の歴史(原題:Humankind: A Hopeful History)』で、人間は本質的に善良だと主張しています。
利己的でもなく、ひどく嫌な存在でもなく、ほとんどの人は親切で寛大であると。
欧米で蔓延している誤情報や右派的な過激主義の最中というだけでなく、パンデミックの直後のこうした発言は、とりわけ勇気がいるでしょう。
本人からぜひ説明を聞きたい。人間は善良なのだと、私を納得させてほしいのです。

①ナルシストが生き延びれない理由

ルトガー・ブレグマン お招きありがとうございます。
カラ さっそくですが、人間の本性をめぐる議論は、新しいものではありませんね。
ジャン=ジャック・ルソートマス・ホッブズといった哲学者の考えは、何世紀も前から議論されてきました。そこで、あなたの言う「善良」の意味を教えてください。
私たちが「人類」と呼んでいる有害廃棄物を前に、善良というのは過激な主張にも聞こえます。
ルトガー 執筆中に『ルソーは正しかった』というタイトルにしようと思った時期がありました。というのも、トマス・ホッブズが言うには、私たち人間は……
カラ 人間は、最悪だった。
ルトガー そう、人間は最悪でした。
自然の状態では、まだ遊牧する狩猟採集民だった時代は、万人の万人に対する闘争でした。
ルソーの主張はその反対で、自然の状態で私たち人間は好ましい生活をしていて、平等主義でしたが、文明という概念を思いついたときに、すべてがおかしくなったというのです。
不平等の起源に関するルソーのエッセイに、素晴らしい一節があります。最初に誰かが「この土地は自分のものだ」と言った瞬間から、すべてがおかしくなった、と。
the first moment when someone said, this piece of land here, that’s mine, that’s when everything went wrong.